ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「EC=売上」だけじゃない!ECに取り組む重要な価値。3【no.2186】

(前回【no.2185】のつづきです)

 テーマは「EC=売上」だけではない、EC事業に取り組む価値について。前回のコラムではECからの「ニーズの発見」によって、EC事業だけではなく会社全体のマーケティングがどう変化したか、について紹介しました。今回は、ECに取り組むことで「会社の何が発展するのか」です。

*データへの取り組みと意識の変化

 ECに取り組むことで、会社の何が発展していくのか。前回、前々回のコラムでご紹介した小中学校向けの教材を販売している会社の事例から、いくつかの変化を読み解くことができます。

 まず、データに対する取り組みと意識の変化です。紹介した事例では、注文データから少年スポーツクラブの「卒団式」というニーズに気づくことができました。ECのマーケティングとは、データを活用したマーケティングです。データの変化からお客様の反応やニーズを読み取り、仮説を立てて改善施策を検討、実践してデータで成果検証、このサイクルでマーケティングを回していきます。

 データは、情報とも言い換えることができます。EC事業でいうところの「セッション数」や「コンバージョン率(CVR・転換率)」といった「数値化できる」情報だけではなく、お客様からの「レビュー」や「問い合わせ」といった「数値化できない」情報も、ECのマーケティングを展開するための重要な情報です。

 当然、ECに本格的に取り組む以前から、データ・情報は社内に存在していたはずですが、活用できていないケースがほとんどです。ECに取り組むことによって、データ・情報への意識は間違いなく変わります。会社の文化として、ECチームを起点にスタッフ全体に展開していくことができるのです。

*データと情報をどう集めるか

 データを活用する、情報を活用するマーケティングの考え方がECチームに注入されると、次に出てくるのは、「そもそもデータと情報をどう集めるか」という課題です。

 データを活用するためには、データが管理されていなくてはいけません。そもそも基幹システムのデータベースがどうなっているか。データ化されていない紙やPDFだけのデータはあるのか。データの集計の時間を削減し、よりデータ分析と仮説立案に時間を使うためにはどうすればいいか。まさに企業の「デジタル化」という課題に、「ECに取り組む」という機会から対応することができるわけです。

 また、情報の活用についても同様です。いかにして、お客様や市場からの情報を集めてくるのか。どうやってその情報をメンバーにシェアするのか。情報をいかに捉え、いかに次のマーケティングの機会につなげていくのか。「情報のシェア」という課題から、スプレッドシートの活用やクラウドストレージの活用に取り組む流れができるかもしれません。

*ECで必然的に「会社を発展させる」

 コロナ禍以降、企業のデジタル化やDX化の動きがより激しくなっていますが、デジタル化・DX化すること自体が目的になっている部分もあります。釈迦に説法ですが、デジタル化・DX化はあくまで目的を達成するための手段であり、それ自体が目的ではありません。目的が明確でないと、「実際の現場で活用されないのに、あの機能はデジタル化だけされた」という遺物が残る可能性があります。

 しかし、「EC事業を成長させる」という目的から、会社のデジタル化・DX化を考えるとどうでしょう。今回紹介したように、「ECのマーケティングを展開する」→「データ・情報を活用する」→「データ管理を見直す」「情報をシェアする方法を変える」と、目的に沿ったデジタル化・DX化を進めることができます。

 目的を達成するために、自身を変化させることが大切です。ECに取り組むことで、必然的に「会社を発展させる」のです。次回も、「何が発展するのか」を引き続き紹介していきます。

 つづく。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから