「EC=売上」だけじゃない!ECに取り組む重要な価値。2【no.2185】
(前回【no.2184】のつづきです)
テーマは「EC=売上」だけではない、EC事業に取り組む価値について。前回のコラムでは、小学校・中学校向けの教材を卸しているとある会社がECをスタートした結果、マーケティングの分岐点となる「あること」に気づいた話を紹介しました。今回は「ニーズの発見」によって会社がどう変わったか。
*ECから商品企画や営業が変化
季節商材かつ商圏が決まっている小中学校向けの教材の他に「売上の柱」を作ろうとスタートしたECサイト。もちろん、当初はECサイトからの売上を期待してスタートしたわけですが、ある出来事をきっかけに、ECサイトのマーケティングだけではなく、会社自体の商品企画や営業スタイルが変化していきます。
きっかけは少年スポーツクラブの「卒団式」で商品を使いたいとお客様から問い合わせがあったこと。たった1件の問い合わせですが、その裏側に大きなニーズが隠れている「可能性がある」問い合わせです。過去のECサイトの注文データを確認すると、少年スポーツクラブかららしい注文履歴がちらほら確認できました。「卒団式」というニーズがある。ここに着目すると、ふたつの仮説・実践策を打つことができます。
*ふたつの仮説、そして実践策を打つ
ひとつは、「卒団式」にこちらからアプローチできないかということです。EC事業のマーケティングであれば、たとえばこれまで「卒業・入学」関連のネット広告をかけていたところに「卒団式」関連のネット広告を追加することができます。会社全体の動きとして考えるならば、営業メンバーに少年スポーツクラブに接触する仕事を加えることができます。小中学校の教材の卸には商圏の制限がありますが、少年スポーツクラブであればエリアの限りはないかもしれません。であれば、チャンスはさらに広がります。また、学習塾の「卒塾式」もあるのではないか?という発想にも広がります。
もうひとつです。こちらの方が事業として重要なポイントかもしれません。「卒団式」専用の商品を企画するということです。現状、小中学校の卒業や入学で使うアイテムとして販売している商材が「卒団式」のために購入されているわけです。もしこの商品を「卒団式」専用として提案することができれば、少年スポーツクラブへの訴求が強くなります。購入を検討して辞めてしまったお客様の購入が期待できるかもしれません。専用の商品を企画することで商品単価を上げる(つまり利益率が高くなる)こともできるでしょう。
専用の商品というのは、具体的にいえば、野球の少年スポーツクラブであれば野球を想起させる要素を商品に加える、サッカーの少年スポーツクラブであればサッカーを想起させる要素を商品に加えるということです。わかりやすいのは「ボール」ですよね。野球やサッカーのボールのワッペンを商品のデザインに加えれば専用感を出すことができます。少年スポーツクラブのテーマ(たとえば「情熱」とか「本気」とか)をデザインに加えるのもいいですね。ここは様々な商品企画を考えることができると思います。
*ECを基軸として会社を発展させる
ECの運営から「卒団式」というニーズを掘り当てたことにより、新しい顧客層にアプローチするという集客のアプローチと、よりニーズに合致する商品を企画するというアプローチのふたつのマーケティング戦略を組むことができるようになったわけです。こうなると、「EC=物販の売上」ではなくECという事業を運営することによって、会社自体の動きが変化しているように感じてきませんか。ECという新しい事業に真剣に取り組むことで、ECを基軸として会社をより発展させることができるのです。
いきなり会社を変化させるのは簡単ではありません。現実的には不可能です。ただ、EC事業を進めることから「必要に応じて」会社を変化させることはできます。これがEC事業に取り組む「本当の価値」です。EC自体が「売上の柱」であることはもちろん、マーケティングのツールでもあるのです。
では、ECに取り組むことで「会社の何が発展するのか」これが次のテーマです。
つづく。
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