ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

お客様の「反応を見」なければ、それはマーケティングではない【no.2171】 

 知人の会社2社から最近同じような相談を受けました。

 2社とも昨年から今年にかけて、ECのコンサルティング大手の会社と1年の契約を結びました。正確な金額は明かせませんが、中小企業にとってはそれなりの金額です。しかし、売上としての成果がほぼ出ていないだけではなく、コンサルタントがリードするマーケティングの方法に違和感があるというのです。

*「やった方がいいこと」は押さえているが‥

 そこでこの知人の会社2社にどのようなコンサルティングを受けているのか、その内容を聞くと両社とも同じような内容でした。ともに楽天市場に出店しているネットショップを中心にしたコンサルティングなのですが、ECのマーケティング業務は網羅的に抑えられていました。RPP広告やTDA広告、商品ページの見直しやレビュー対策、検索対策やメルマガ、同梱物の見直しなどなど、「やった方がいいこと」をきちんと押さえている印象です。

 両社とも1年間の綿密なスケジュールを作成し、「1月はサムネイル画像の強化」「5月はアップグレード商品の開発」など、ひとつひとつ着実にネットショップの改善を進めているようでした。知人の会社のECチームでカバーできない改善施策については、提携している外部のパートナーが紹介され、バックアップの体制も万全です。こう見ると、実績が伸びていきそうなものですが如何せん売上が思うように伸びていかない。2人の知人はともに「なぜなんだ?」と。

*気になる「振り返り」の薄さ

 知人の2社のEC担当者さんの話を聞き、また拝見したコンサルティング資料をみると、あることに気がつきました。「振り返り」がないんですね。もちろん月例の定例会議で「セッション数が上がりました」「この商品が売れはじめました」みたいな共有はあるようなのですが、「振り返り」の的がズレているようなのです。

 たとえば、RPP広告をスタートしたならば「セッションが上がった」のは当たり前です。ポイントは想定していたより良かったのか、悪かったのか。セッションは上がったが、それはすべてRPP広告の開始によるものなのか。自分たちがいま要因として理解していない、成果に繋がっている別の要因はありえるのか。あるとしたら、それは何なのか。本来であれば、前月の成果データをもとに、その要因を徹底的に掘り下げなければいけないわけです。

 要因を徹底的に掘り下げると、成果に効いている改善施策と成果にあまり効いていない改善施策を「定量的に」知ることができます。また、自分たちが改善施策をおこなっていないが、成果に繋がっている要因(いわゆる外的要因)についても気づくことができます。「振り返り」から「より効率的に成果を上げるため、自分たちが徹底するべき改善施策」を探していくのです。これがネットショップの「戦略」につながってきます。

*徹底するポイントを見つけるために

 RPP広告をやる。TDA広告をやる。商品ページの見直しをやる。レビュー対策をやる。検索対策をやる。メルマガをやる。同梱物の見直しをやる。もちろん悪いことではありません。ネットショップのためにはすべて「やった方がいいこと」です。ただ、どの会社も「時間とお金」は有限です。この知人の会社2社は中小企業です。当然「時間とお金」は無限ではありません。残念ですが、「やった方がいいこと」をすべてやるコストはありません。

 大切なのは「やった方がいいこと」ではなく「やらなければいけないこと」を見つけだすことです。10個の施策をやるのではなく、成果につながる1つの施策を徹底的に掘り下げること。これこそ中小企業がやるべきEC戦略です。この観点から考えると明白です。「振り返り」がなければ、いつまで経っても「成果につながる1つ」を見つけ出すことはできないわけです。

 ECのマーケティングは「実践する」だけでは50点です。残りの50点は「反応を見る」ことなのです。その反応とは、お客様からのデータであったりレビューであったりお問い合わせです。この反応をみて、より成果が出るように自らとチームの行動を「チューニング」していくのです。「反応を見る」という前提がなければ、残念ながらECで成果が上がり続けることはありません。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから