ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

結局、AIを使う側の人間の能力次第である理由【no.2164】

 前回のコラム(no.2163)で、「AI時代には「言語化」の能力が必要になる」ことについて書きました。

 AIは適切なプロント(指示)によって動く。プロンプトはAIにとってはインプットだが、指示する人間にとってはアウトプット。いかにアウトプットの質を上げるか。これによって、AIをどれくらい活用できるかが決まる。こんな内容でした。

 今回のECMJコラムは、「AIの登場によって、能力による成果の差が大きく広がっていく」という話。つまり、AIの登場により最終的には貧富の差がさらに開いていくことになるんですね。

*AIに「1,000億円の事業計画」を指示しても

 AIの活用についてよくある勘違いは、「AIがなにか素晴らしいものをつくってくれる」という妄想です。残念ながら、AIは活用する人間の能力以上のものをつくってくれません。もしも仮に、AIが「活用する人間の能力以上」のものつくったとしても、受ける取る側の人間はその情報を「現実的に」活用できないでしょう。

 たとえば、AIに「年商1,000億円の会社をつくりたい。プランを出してくれ」みたいな指示を出すとします。よくありそうな話ですが、このような抽象的なプロンプトではAIは適切な回答を出してくれません。汎用的な、どこにでもありそうな、解像度の低い回答が出てくるだけです。

*現実的に人間が「判断」できるのか

 もし仮に「年商1,000億円の会社をつくりたい。プランを出してくれ」で、事業計画が出てきたとします。この事業計画の内容が実は「それなりのもの」だったとしても、「年商1,000億円の会社をつくりたい。プランを出してくれ」という抽象的なプロンプトを入れる人間側が「それなりのもの」だと判断できるとは思えません。

 実はそれなりの事業計画だったとしても、「判断ができないので、アイデア自体がほっぽり出される」もしくは「中途半端にしか実行に移されない」、これが現実ではないでしょうか。AIに指示を出すのが人間ならば、AIのアウトプットを判断するのも人間なわけです。

*AIには素晴らしい力があるけれど

 もし、人間側に「それなりのもの」だと判断する能力があるとしたら、そもそもプロンプトを入力する時点で、より具体的で解像度の高い指示が入るはずです。

 たとえば、「我々は〇〇の業界で20年間事業を継続していて、市場のシェアは〇〇%である。主力商品である〇〇は××であることが強みで、この強みを活かした新商品もしくは新市場を狙っていきたい。年商1,000億円を目指す上での、課題とリスクは〇〇だと想定しているが、インターネット上から取得できる市場環境のデータを加味した場合、どこにビジネスチャンスがありそうか」とか。おそらくもっともっと解像度の高い指示になるのでしょうが。

 このような指示ができる人間ならばAIのアウトプットに対しても、自身で判断できますし、重ねてのプロンプトでより解像度の高い事業計画がつくれるはずです。つまり、AIに指示を出す側の人間の能力、「発想」「インスピレーション」「アウトプット力」など以上には、結局AIを活かすことはできないわけです。AIには「素晴らしいモノをつくる」能力はありますが、人間の能力以上のモノはできない理由がここにあります。

*AIにはマネジメントが必要ない

 逆に、「発想」「インスピレーション」「アウトプット力」がある人間にとってはAIは「自分の能力をいかんなく発揮してくれる」ツールです。

たとえば、鋭いアイデアを持っていたとしても従来はその具現化に工数がかかっていました。先の事業計画や資料作成、文書作成やHTMLコード、写真撮影などもそうです。ある一定の作業によって、鋭いアイデアの具現化に時間がかかっていたわけです。もちろん、社内外のメンバーのサポートを受けるわけですが、教育・管理などマネジメントのコストがかかっています。

しかしAIを活用することで、ここをすっぱ抜くことができるわけです。鋭いアイデアがある人間はそのアイデアをAIにいかんなくアウトプットし、具現化の手間を省きながら仕事を進めることができます。結果、成果の差が広がり、貧富の差がより広がるわけですが、ある意味、人間の人間たる部分に注力できるようになる、とも言えるのかもしれません。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから