ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

情報を提供して成果スピードを上げる【no.2148】 

 外部ソリューションに社内のどのような情報を提供すれば、成果のスピードがより上がるか、を常に考える(人材・チームをつくる)ということ。今回のECMJコラムはこんなテーマで書いていきます。

*ROASはあまり役に立たない

 インターネットの広告代理店さんが使う言葉で「ROAS(ロアス)」があります。広告代理店さんとのお付き合いがある会社さんは必ず聞いたことがあると思います。また、自社内でネット広告の運用をしている会社さんも、成果検証の際に「ROAS」を使っているかもしれません。

 馴染みがない方のために少しだけ説明をすると、「ROAS」は広告の成果指標のひとつで、「広告による売上÷広告費×100(%)」で計算されます。たとえば、広告費50万円に対して、広告による売上が100万円発生したとしたら、ROASは200%ということになります。広告費に対して売上が倍取れているわけですからね。

 広告代理店さんは「今回、ROAS500%でしたよ!やりましたね!」とか「ROAS200%しか取れなかったので、もう少し改善が必要ですね」などと、広告掲載後の振り返りで話してくれるわけなのですが、このROASという指標、事業者の立場からするとあまり役に立たないというのが本音です。

 なぜならば、ROASという指標は原価率や利益率を加味していないデータだからです。

*ROASを提供「せざるをえない」理由

 広告代理店さんのコメントで「今回、ROAS500%でしたよ!やりましたね!」というものをあげました。ROAS500%は一般的に悪くはない数字なのですが、もしも家電のような利益率の低い(けど高額)商材であれば、赤字になるんですね。広告費20万円、広告による売上が100万円だとROAS500%。しかし、利益率10%だとしたら10万円の赤字になります。

 逆に、広告費50万円で広告による売上が100万円だとROAS200%。一見もの足りない成果のように感じるのですが、もしも利益率が80%の商材だとしたら(オリジナル商品だと全然ある)利益も出ている且つ新規顧客も獲得できているので、広告投資をさらに加速しましょうという判断もできるわけです。

 ここまでの話はけっして広告代理店さんをディスっているわけではありません。逆に、広告代理店さんの立場からいえば、「自分たちが連携しているシステム内」でしかデータが取れないのは当然のことです。ある意味、自社のシステム内で取得できる「ROAS」を成果指標として提供「せざるをえない」ともいえるのです。

*認識のズレなく同じ方向を向くために

 しかし、もしも広告代理店さんに広告出稿を依頼する我々「事業者側」が事前に社内の情報を提供していれば状況はどうなるでしょうか。今回のROAS問題についていえば、商品原価率もしくは利益率を先に伝えておくことで、振り返りでは広告代理店さんと成果の「認識のズレのない」判断ができるようになります。もちろん、次なる改善策も社内の情報が加味された提案が出てくるはずです。

 EC事業者における対広告代理店さんのケースであれば、商品原価率・利益率の他に、月次の商品販売実績データ(売れ筋データ)や向こう3ヵ月以上の新作商品発売・販促企画のスケジュールなども共有しておくべきです。自社内の情報を広告代理店さんに共有することにより、事業者とパートナーが同じ方向を向いて仕事をすることができるようになります。

*自社に「判断」ができる人材をつくる

 今回、広告代理店さんを事象例として書きましたが、これは対制作会社さんや対開発会社さんなど、様々な場面でおこっている問題です。成果のスピードが上がらないのは、必ずしも外部のソリューションが悪いわけではありません。自社の「活用の仕方」が上手くないことも影響をおよぼしています。経験上、むしろ自社に問題があるケースの方が多いかもしれません。「代理店さんにすべてお任せします!(我々わからないんで!)」で成果が出る時代ではないのです。

 まずは「外部ソリューションに社内のどの情報を提供すれば成果のスピードがあがるかを常に考える」習慣をつくることからです。まだまだデジタルマーケティングの判断ができる人材がどの会社にも少ない中で、上手く外部ソリューションを活用できれば、既存市場を突き抜けるチャンスになるはずです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから