令和4年の電子商取引市場調査の考察【no.2119】
経済産業省が毎年発表している「電子商取引に関する市場調査の結果(令和4年度)」が8月末に発表されました。
(経済産業省サイト)
こちらは経済産業省が定点的に発表している電子商取引(EC)に関するデータです。ECMJのセミナー等々でも日本のECの市場環境の説明のために使っています。今回のコラムでは、この「電子商取引に関する市場調査の結果」を考察していきます。
コロナ禍のBtoC-ECは非常に特殊
令和4年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は22.7兆円となりました。令和3年(2021年)が20.7兆円、令和2年(2020年)が19.3兆円ですから、3年続けて市場規模が伸びていることになります。
基本的に右肩上がりが続いているBtoC-ECの市場規模なのですが、実は一度前年割れをした年がありました。先に紹介した2020年です。2018年の市場規模は18.0兆円、2019年が19.4兆円で過去ひたすら右肩上がりを続けてきたBtoC-EC市場が19.3兆円に前年割れしたのです。理由はコロナ禍でした。
このコロナ禍のBtoC-ECは非常に特殊で、BtoC-ECの中でも物販系分野については市場規模が伸びています。2019年の物販系分野の市場規模が10.1兆円、2020年が12.2兆円ですから、一気に伸びました。これはコロナ禍による、非対面・ネット活用・巣ごもりが影響しています。
逆にコロナ禍によってBtoC-ECで大きく下落したのがサービス分野です。このサービス分野が何を指すか、というところがポイントです。BtoC-ECサイトを活用した、旅行の予約やイベントチケットの購入がサービス分野にあたります。コロナ禍によって、一気に止まってしまった部分。2019年の7.2兆円に対し、2020年は4.6兆円まで下がりました。
伸びを牽引するサービス分野のBtoC-EC
ここまで読んでいただければわかるとおり、令和4年の22.7兆円の伸びを牽引しているのは、物販系分野のBtoC-ECではなく、サービス分野のBtoC-ECです。
物販系分野については2021年の13.3兆円に対し、2022年は14.0億円。伸びとしては5.3%程度の伸びです。サービス分野については、2021年の4.6兆円に対して、2022年は6.1兆円と32.4%の伸びになっているのです。日本の経済状況を考えれば、物販系分野の5%でも伸びている方だと思われますが、サービス分野(旅行・イベント)が一気に戻ってきたのが、令和4年(2022年)ということになります。
しかしながら、現実的に旅行やイベントが解禁されたのは令和5年(2023年)になってからです。コロナ禍前のサービス分野のBtoC-EC市場規模が7.2兆円です。2023年のサービス分野は少なくとも7.2兆円以上のレベルまで伸びるのではないかと考えられます。それに反して、物販系分野のBtoC-EC伸びるのか、横ばいなのかが注目になります。現場のECに携わっている我々の感覚値としては、物販系分野については2022年に対して「横ばい」という印象です。それほど、旅行・イベントへの思考性が強い状況を感じています。
急カーブでEC化が進むジャンル
資料の中にはもう少し細かいデータが存在します。物販系分野のBtoC-ECにおける、各ジャンルのEC化率です。
まずEC化率とは何ぞや、という話です。「すべての商取引において、EC(電子商取引) の市場規模が占める割合」。これをEC化率といいます。ちなみに2022年のBtoC-EC物販系分野の市場規模は14.0兆円。これはEC化率だと9.13%になります。つまり、日本人の物販消費の9.13%はECによっておこなわれていることになります。
物販系分野の各ジャンルのEC化率をみてみます。特にEC化率が高いのが「書籍・映像・音楽ソフト」のジャンルです。実にEC化率は52.1%。電子書籍やオンライン配信など、圧倒的にEC化が進んでいます。2021年のEC化率は46.2%です。ここは急カーブを描くようにEC化が進んでいるジャンルだと言えそうです。
他に2021年からEC化率が進んだジャンルを上げると「生活家電・AV機器・PC/周辺機器」です。こちらは前年38.1%から、42.0%に成長。家電量販店もECを起点にビジネスを組み立てなければいけない時代がきています。
様々データが出ていますので、ぜひ自社に関するデータを見てみてください。
(経済産業省サイト)
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