ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

チョコザップにみる市場成長とサービスの穴【no.2119】

 チョコザップが人気のようです。

 IR資料によると、チョコザップの会員数は8月14日の時点で約75万人。フィットネスクラブの会員数第一位はエニタイムフィットネスで約78万人。第二位がカーブスで約77万人。しかし、この勢いだとチョコザップが間もなく会員数第一位になりそうです。

 ちなみに、フィットネスクラブ大手であるルネサンスは約38万人。セントラルスポーツが約34万人。この2ブランドについてはすでに会員数では超えてしまっているようです。

チョコザップはなぜ拡大しているのか

 チョコザップをまだご存じない方向けに簡単に説明します。チョコザップはプライベートジムのライザップが始めた新しいフィットネスブランドです。チョコザップという名前のとおり「ちょこっと筋トレしたい」お客様を対象にしています。「簡単」「便利」で「楽しい」コンビニジム、がコンセプトなんですよね。店舗数も全国で約950店舗まで拡大しています。(2023年8月末時点)

 店舗の出し方や店舗運営にかなりのノウハウがあるようなのですが、そこはここでは触れません。今回のECMJコラムで考えたいのは、「ちょこっと筋トレしたい」人向けのジムがなぜヒットするか、というところなんです。(実際、私の妻もママ友から「チョコザップに行かない?」って誘われたらしいんですよね。けっこう浸透してますね)

ちょっとだけやりたい層の行き場は

 国内のフィットネス市場が増加傾向であることは、何となく感じられる部分かと思います。2023年の時点では約3,100億円、5年後の2028年には約3,400億円に成長するといわれています。フィットネスジムやパーソナルジムの他にも、「プロテイン」などフィットネス関連の商品が市場を牽引しているのは間違いありません。我々の実感値としても、身の回りに筋トレをしている人が増えた、プロテインを飲んでいる人が増えた、みたいなことは感じるところかと思います。

 筋トレ系のジムというと、有名なのがゴールドジムですよね。ゴリゴリマッチョな人たちがたくさんいるわけですが、ゴールドジムではないいわゆる「普通のフィットネスクラブ」にもガチ筋トレ系の人がたくさんいます。実際にジムに通われている方はわかると思います。筋トレスペースをガチ勢が占拠していて、ちょっと参加しずらい雰囲気なんですよね。軽いダンベルでトレーニングしづらい雰囲気も。

 つまり、フィットネス市場(とくにここでは筋トレ)は筋トレガチ勢を生み出した。と同時に、「ちょっとだけ筋トレしてみたい」層も生み出した。しかし、普通のフィットネスクラブもガチ勢が占拠し始めた。行き場のない「ちょっとだけ筋トレしてみたい」層をチョコザップが取り込んでいるのではないかと思うのです。

市場成長から生まれるサービスの穴

 以前のコラムでECのインスタントカートの成長について書きました。BASEがなぜここまで成長したのか。我々EC業界に長くいる人間としては「売上と利益を上げるEC事業をつくるのが善」だったわけですが、世の中的には「まずは自分のECサイトをもってみたい」層が多かったというわけです。ここ、今回のチョコザップの事例とかなり似ていると思うんですよね。

 市場は上に向かって動いていくのが基本です。ECであれば「もっと売上があがるECサイトを」。そして筋トレであれば「もっと身体が仕上がるジムを」。しかし、市場が成長すれば必ず「そこまで本気じゃないけれど、ちょっとやってみたい」という層が生まれます。ECも筋トレも全員がガチ勢ではないのです。ただ、市場全体が上に向かって動いているため、ガチ勢ではない層向けのサービスがぽっかり空く瞬間があるのではないか、という見立てです。

 さて、みなさんの業界の「ガチ勢ではない層向けのサービス」は果たして何でしょうか。ぜひ我々ECMJともディスカッションさせてもらいたいところです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから