新規顧客開拓にどれくらいコストをかけられるか【no.2095】
「つまるところ、新規顧客の開拓にどれくらいコストをかけられるか。これがマーケティングの勝負をわける」最近読んだ本にこう書いてあり、とても納得した。
この「コスト」という表現。お金、時間、労力、このあたりの意味と変換してもよいかもしれない。そして、「新規顧客の開拓」。これは「広告」だけではおそらくない。お客様を増やすための施策と広い意味でとらえるのが良さそうだ。
顧客維持には限界がある
ECビジネスにおいても、結局行きつく先は「新規顧客の開拓」なのである。私自身、もうすでにこの業界に18年いることになる。18年前に課題だったのは「新規顧客の開拓」、そしていまも課題なのは「新規顧客の開拓」。
新規顧客の開拓は容易ではない。そうなると話題に上がるのがリピート顧客(既存顧客の育成)になる。いわゆるリテンション(顧客維持)マーケティングだ。しかし、いくらEC事業者が仕組みを整えようと、お客様の人生にはあらがえない。ブランドが飽きてしまう可能性もある。他のブランドが好きになる可能性もある。結婚や出産、介護など生活の変化でショップを離れることもある。
ましてや、不動産や相続などのサービスの場合、リピート性が強いとも言えない。1回や2回の購買行動を、マーケティングによって3回4回に増やせない市場もあるわけだ。
CVR(転換率)と客単価は高難易度
ECビジネスには売上の公式と呼ばれるものがある。ECMJコラムを読んでくれているみなさんならご存じだと思う。「売上=セッション数×CVR(転換率)×客単価」という公式だ。この掛け算は「セッション数・CVR(転換率)・客単価」のいずれかの数値項目があがれば、成果である売上があがるようにできている。たとえば売上を3倍にするためには、セッション数はそのままで「CVR(転換率)と客単価を1.7倍にする」みたいな目標が出てくるわけだ。
このCVR(転換率)と客単価を1.7倍にするという目標。実は高難易度なのだ。なぜか。CVR(転換率)はECサイトの規模が大きくなればなるほど、落ちる数値項目である。どちらかといえば、売上が下がった場合に上がる数値項目なのだ。ECサイトの規模を大きくしつつ、CVR(転換率)を上げるは難易度が高い。さらにCVR(転換率)は「割り算」の数値項目なので、「上がることが良い」とも言い切れない。
そして客単価。客単価はECサイトにおける「顧客層」そのものなのだ。だから、客参加を1.7倍にするということは、現状の顧客層を「入れ替える」ことになる。なぜなら、お客様の財布の中身は基本的に一定だからだ。その商品がその品質に対してその価格だから、お客様はあなたのブランドを好むのである。もし同じものが1.7倍の価格になったら?あなたもあっさり他店を探すだろう。テクニックで客単価を上げられるのは大方30%程度と考える。
「セッション数を増やす」が現実的
売上の公式の理屈からいっても、結局売上をあげるためには「セッション数」を増やすのが最も現実的な選択肢になる。セッション数は「既存顧客セッション」と「新規顧客セッション」の足し算。そして既存顧客セッションについては、前述のリテンションのとおり。もちろん仕組みをつくる必要はあるが、それだけではECサイトはジリ貧になる。むしろ、リテンションマーケティングを頑張る理由は「新規顧客の開拓コスト」を発掘するため、というのが正しい考え方ではないだろうか。
予算規模が大きい企業のECサイトであれば、広告を中心とした集客戦略と獲得コスト・ライフタイムバリュー(LTV)の把握が「コスト」になる。リソースの限られる中小のECサイトであれば、SNSと広告の活用、同じくCPAとLTVの分析、そして大規模サイトが適えられない商品企画で極端な市場ニーズを「できる限り早く」拾っていく。
いずれにせよ、「新規顧客の開拓にどれくらいコストをかけられるか」。これが勝負の分かれ道になるわけなのだ。
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