ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ネットショップ売上ゼロフェイズの考え方【no.2043】

 今回はEC事業の「売上ゼロのフェイズ」についてお話します。

「売上ゼロのフェイズ」のバックオフィス

 まずは「売上ゼロのフェイズ」のバックオフィスです。

 EC事業のバックオフィスとは、主に「お客様からの注文後の仕事」を指します。具体的には、受注処理・データ管理・発送処理(物流)・カスタマーサポートなどです。「売上ゼロのフェイズ」において、商品数を増やすこととデータを活用することをマーケティング業務(=フロントヤードともいう)として紹介しました。しかし、お客様からの注文後のバックオフィスの仕事も当然あるわけです。

 まず大前提です。売上ゼロのフェイズはとにかくフロントヤードの仕事に時間を割くべきです。つまりお客様から注文をもらうことに全力を使うべきです。バックオフィスの仕事は「きたものを捌く」中心で進めていって良いと思います。売上ゼロのフェイズなのですから、受注も物流もそう多くはないはずです。受注システムの導入も検討する必要はありません。データの管理もECのシステム上であったり、エクセルを加工する程度で問題ありません。

「商品マスター」は整備しておこう

 ただ、このフェイズはECを担当者ひとりで回すことになります。もしかしたら既存事業の仕事をもっている兼任でのEコマース担当かもしれません。できる限り売上をとる仕事ができるように、バックオフィスの仕事を他のメンバーでもカバーすると良いでしょう。受注処理・物流・カスタマーサポートの仕事はパートさんにお願いすることも可能です。「売上をあげる仕事」をする担当者が、バックオフィスで手一杯になってはいけません。

 売上ゼロのフェイズはアナログに近い、「きたものを捌く」ベースで構いません。しかし、ひとつだけ仕組みをつくっておいた方がいい仕事があります。それは「商品マスター」の整備です。商品マスターをご存じの方は多いと思います。Eコマースで取り扱う商品の商品台帳のようなものです。商品マスターの作成はエクセルで構いません。

 売上ゼロの初期フェイズでも商品マスターを整備しておいた方がいい理由。それは、ECが成長して管理する商品が増えるとマスターの整備が面倒になるからです。商品マスターのルール決めは最初のうちにおこないましょう。場合によっては品番の振り直し、登録内容の変更といった仕事が起こりえます。スタートフェイズである程度商品マスターのベースを固めておきたいところです。

「売上ゼロのフェイズ」の注意点

 次に「売上ゼロのフェイズ」の注意点です。

 ネットショップはお客様の顔がみられません。実店舗はお客様が来店してくれ、店舗の中を回遊し、商品を手に取ってくれます。その際の表情やしぐさ、店員とのコミュニケーションで反応を感じることができます。しかし、ネットショップはお客様とインターネットを介しています。Eコマース担当者が向き合うのはパソコンの画面です。

 売上ゼロのフェイズはお客様からの反応も希薄です。注文だけではなくネットショップへのアクセスも少ないわけです。砂漠の真ん中でお店を出しているような感覚になります。データ上はお客様がアクセスしてくれていても、顔がみえないため実感がわきません。売上ゼロのフェイズでもっとも注意しなければいけないこと。それは、Eコマースの運営自体を「諦め」てしまうことです。

「運用コスト」の必要性を理解しておく

 ネットショップというのはお客様に「探される」「見つけられる」からこそ存在します。ネットショップを立ち上げただけではお客様にとって存在しないものと同じです。お客様の「目」に触れられるようになってはじめて存在価値が出てくるものなのです。そして、お客様の「目」に触れられるようになるためには多少の時間がかかります。

 これが実店舗であれば、オープン日がもっともお客様にアピールする機会になります。お客様が新しいお店に興味をもって店舗に入ってきてくれるかもしれません。しかし、ネットショップにおいてはそういったことはありえないのです。ECは「初期費用」を抑えることができます。しかし、その分「運用コスト」がかかるということの理解が必要です。そしてこの「運用コスト」の必要性に気づくことができないと、ECを諦めてしまいます。

 自社サイトやショッピングモールでネットショップを立ち上げた。少しの期間手を加えていたけれども、注文がこなかったのでほったらかしにしている。こんな会社さんも多いのではないでしょうか。ネットショップは立ち上げただけで売上があがることはありません。立ち上げてからの運用がポイントなのです。この「運用」がEC事業者の皆さんがもっとも困っていることかもしれません。

やったりやらなかったりは意味がない

 多くの会社さんが母体事業と並行してECで販路を拡大する戦略を取っています。母体事業もあるわけですから、ECの反応が鈍ければ優先順位が下がるのが当然です。ただそうなった時点で、EC事業の成長の芽は消えたといっても良いでしょう。

 Eコマース事業を「新しい事業の柱」に成長させる。そのためには、事業計画と予算をつくり会社として「やりきる」状況をつくること。そしてその計画を遂行する責任者を明確に設定すること。Eコマースについて考え・施行する時間を定期的に取ること。この3つがポイントになります。やったりやらなかったりを繰り返しては、結果的に一歩も前に進みません。

「売上ゼロのフェイズ」のインターネット広告活用

 最後に「売上ゼロのフェイズ」のインターネット広告活用です。

 原則としてEC事業を立ち上げたばかりのネット広告活用はおすすめしません。なぜなら広告効果が上がらなかった場合、その問題が商品なのか、ページなのか、複合的な要因により判断ができないからです。広告活用は売上にならなくても、次の施策につながる「何か」を得たいところです。

 そういった点からいえば、売上を狙った広告の活用はスタートフェイズにおいてあまり意味を成しません。しかし、マーケティングとしての活用はまだ意味があります。つまり、要因のどこに問題がありそうかを把握するために広告を活用するのです。

 本来であれば、まずは商品数を増やす。次に商品ページごとのデータを分析する。そして、市場の状況と競合の施策をみて、自社のネットショップに改善を加える。その改善の結果をさらにデータで検証し、重ねて改善を加える。その上でインターネット広告を活用する。これがEコマースを成長させるための作法です。しかし、そもそものアクセスがないと分析データが取れない一面もあります。また会社さんによっては事業を急成長させるため広告予算を最初からとっているところもあるでしょう。「成果検証」を前提にインターネット広告を活用していってください。

まずはPPC広告からスタートする

 活用するインターネット広告は何がベターか。Googleアドワーズ広告やFacebook広告のような「PPC広告(ペイパークリック)」をおすすめします。

 PPC広告の良いところは、「好きなときに始められ、好きなときに止められる」点です。また、広告の出稿内容を「好きなときに変更できる」という点もポイントです。Eコマースのマーケティングの成功のポイントは「運用」にあります。データをみながら改善を加えていくことが成功への道筋です。「好きなときに始められ、好きなときに止められ、好きなときに変更ができる」。PPC広告はEコマースのマーケティングに非常に向いているといえます。

「出稿後に変更できない」広告は慣れてから

 逆に初期の段階で難易度が高いのは「出稿後に変更できない」広告です。入稿期限や入稿内容、掲載期限などが明確に決まっている広告はスタート後に「ミスした!!」と思っても後の祭りです。一部、出稿内容を変更できる広告もありますが、「すぐに変更」はできません。インターネット広告の活用に慣れてからチャレンジした方が良さそうです。

 バナー広告がPPC広告よりも成果につながらないか。他のアフィリエイト広告やリワード広告の方が効果が高いのか。こんな話になるとまったく別です。商材やアプローチ方法によって広告の成果は変わります。「実践して検証」しなくてはわかりません。いずれにせよリスクの低く、データの取れる広告からスタートしていきましょう。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから