ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

デジタルマーケティング担当者の「採用と育成」と「外部委託」【no.2027】

 先日、オンラインセミナーに登壇させていただきました。

 視聴者の皆さんから事前の質問をいただいた中で多かったこと。それはデジタルマーケティングの担当者を「新規採用」するのが良いのか。それとも「社内育成」するのが良いのか。また、内部でおこなう仕事と外部に業務委託する仕事のバランスはどう考えれば良いのか。そんな組織編制に関する質問でした。

 今回のECMJコラムはデジタルマーケティング担当者の「採用と育成」そして「内部と外部」について。

担当者の採用が危険な理由・・

 アフターコロナ/ウィズコロナの時代に突入しました。ネットを中心としたマーケティングの活用に迫られている会社さんも多いと思います。デジタルマーケティングを展開する上で「誰にその担当を任せるか」。これが喫緊の課題になっていると思います。手っ取り早いように思えるのがデジマの経験者を新規採用することです。現状のメンバーを育成していくのは「時間がかかる」と思われています。

 しかし、まず前提条件を考えると、デジタルマーケティングを展開できる人材が採用の市場にどれだけいるか。実はそこまで多くはありません。デジタルマーケティングの歴史はたかだか15年程度です。また、どの会社にもデジタルマーケティングの部署があるわけではありません。「デジタルマーケティング担当者」というそもそものパイが少ないわけです。

 また「デジタルマーケティング担当者」といっても、専門知識に偏りがあります。ネットの広告代理店出身者ならばデジタルマーケティング施策は広告に偏ります。WEB制作会社出身者ならばWEBサイトの更新やリニューアルに施策が偏ります。バックグラウンドになっている知識の偏りが実際のアプローチにも強く影響してしまうのです。

そもそもあまり該当者がいない問題

 企業の「デジタルマーケティング担当者」に求められること。それは、企業全体のマーケティング戦略を理解すること。デジマがいかに全体の戦略を補完・加速できるかを考えること。広告や制作に限らず、あらゆる選択肢を取捨選択して決断をしていくこと。これらが求められるわけです。しかし「デジタルマーケターの“色”」がつくと、それがリスクにもなりかねません。

 採用市場にデジタルマーケティングを展開できる人材のそもそものパイが多くはない。そしてバランスよくデジマの選択と判断ができる人材というとさらにパイが狭まる。こういった市場の状況の他にも、「採用」が難しい理由が他にもあります。そういった「需要>供給」である人材が「自社に入社してくれるのか」ということです。

社内のメンバーを育てるのが確実

 採用市場においてデジタルマーケティングの経験者は「25歳~40歳」あたりです。はたしてこの「これから働き盛りに入る」人たちが「自社に入社してくれるのか」。ここがポイントです。自分自身の今後のキャリアを考えた場合です。よりインプットが多いソリューション企業やスタートアップに転職するのが現実です。本来は事業会社に勤め、デジマの実践を積むことが本当のキャリアになります。しかし、どうしてもインプットよりもアウトプットが多い転職と思われてしまうのです。

 また自社の必要性にあったタイミングで人材に出会えるかの問題もあります。人間関係が上手くマッチせずにせっかく入社しても退職してしまうこともあるはずです。そう考えるとデジタルマーケティング担当者の採用は簡単ではありません。現実路線では社内メンバーを育成していくのが確実です。

まずは自社のデジタル化を議論してみる

 まずは内部の社内メンバーでデジタルマーケティングを展開してみることです。最初は言葉の意味もわからないかもしれません。ツールの選び方もわからないかもしれません。ないない尽くしからのスタートになる会社さんもあるかもしれません。まずは「デジタルマーケティングについて議論する」時間を取ること。そして「自分たちのどんな仕事をデジタル化できるか」から話し合ってみましょう。

 「内部」と「外部」のリソースをどれだけ活用するかの議論の前段です。まず自分たちで検討する機会をつくってみましょう。大切なのは「自分たちでできない(もしくは効率的にでない)から外部にお仕事を依頼する」。そんな流れを作ることです。WEBサイトの制作やコンテンツの作成。データ分析やインターネット広告の出稿、顧客データの管理。ハナからすべて外部を活用する前提では商売が成り立つわけがありません。

 現実的にデジタルマーケティングの展開規模が小さい間です。顧客データの管理、受注データの管理はエクセルが使えればまったく問題ありません。CRM/SFAを検討する前に、まずはエクセルで顧客管理をおこなってみましょう。最初からツールやシステムを導入するとデータ分析やマーケティング活動の「幅」が、ツールやシステムでできることの「幅」に狭まってしまう可能性があります。これは勿体ないことです。発想力を豊かにするためにも、まずはアナログな管理をおすすめします。

外部に依頼するときの考え方

 実際に外部に業務委託をおこなう場合、2つの視点から仕事を依頼していきます。

 ひとつは自分たちではまかないきれない専門的なスキルが必要な仕事。WEB制作やシステム開発、レベルの高い広告運用やコンテンツの作成。これら専門的なスキルを持っている外部のパートナーに委託する方が良さそうです。

 もうひとつは「注力すべきポイント」以外の業務です。デジマ担当者としてはできるだけ「数字を上げる」仕事に注力していきたいわけです。バックヤード業務や完全ルーチン業務は外部にお願いして良いかもしれません。ただ、こちらは「自社の強み」を消す可能性があるのでケースバイケースです。

 BtoCにおけるEコマース。BtoBにおけるインサイドセールス。デジタルマーケティングの運用改善はいよいよ企業の待ったなしの課題です。データもツール・システムも活用し成果に繋げていくのはあくまで「人」なのです。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから