ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

メーカーが直販をやるときの常識と非常識【no.1639】

(2018年7月のコラムです)

メーカーが直販をやるときの常識と非常識。ちょっと「うーん、そういうことアリなのかなぁ」と思ったことがありました。意を決してってほどじゃないけれど書きたいと思います。

メーカーの直販Eコマースサイトの立ち上げについて、ですね。

*小売りに出している商品を値引きして売る

少し困った話がECMJのクライアントさんから上がってきました。ショッピングモールに大手メーカーがネットショップを立ち上げた。しかも小売りの販売価格よりも安い値段で商品を販売しているというのです。問屋さんを通して商品を買っているネットショップには販売価格を守らせています。でも自社のネットショップでは全く同じ商品を値引きして販売しています。さらにショッピングモールの出店ですから、同じ商品同士価格は比較されます。メーカー有利なのは明白です。

しかもタチが悪いことに、このメーカーさんは大手の食品メーカーなのです。名前を聞いたら誰しもが知っているようなところです。非上場なので売上高は公開されていませんが年商で数百億円という規模のメーカーです。スーパーやコンビニにいけばどこでも商品が販売されています。

*小売りの信用をなくしてまで出店する理由は

そんな会社がいまさら直販Eコマースサイトを出店して何がしたいのでしょうか。残念ですが、ショッピングモールに出店しても年商数十億にはなりません。おそらく市場規模と商材を考えれば良くて年商5億円以下、年商3億円程度です。おまけにシステム利用料などのコストもかかりますから、利益も大きくは残らないはず。なぜ微々たる売上と利益のためにネットショップを出店したのか、不明です。(母体比です)

仮に年商5億円でもインターネット上の需要から回収したかったとしましょう。また社内のネットに興味がある若手が腕試しやマーケティングの一環としてショッピングモールにEコマースサイトをオープンさせたのかもしれません。でも、モールには商品を仕入れて販売しているネットショップがたくさんいます。なぜ今まで商品を頑張って売っていた小売り店舗の信用を失うような行為をするのか。

*メーカーが直販のネットショップをやるときの常識

世の中にはやっていいことと悪いことがあります。やれるけどやっちゃいけないこともあります。人の信用を失うことや不義理を働くことはやってはいけないことに入りますよね。今後の付き合いを考えない、今後の批判を考えないならばやってもいいのかもしれません。でもその場合、総スカンの可能性・炎上の可能性も覚悟しなければいけません。

メーカーがEコマースを活用して直販をおこなうケースは多々あります。現在のEコマースの主流のひとつかもしれません。ただ自社オリジナルの商品を中心に展開するケースがほとんどです。仮に卸している商品を販売していたとしても販売価格を崩さないのが常識的です。小売りに設定している販売価格を割るなんてのはもっての他です。

百歩譲って中小企業のメーカーならわかります。大手の下請けメーカーとして「BtoB事業をこれ以上続けていくのにはリスクがある、ただいきなりBtoCには切り替えられない」という場合です。BtoBからBtoCへの過渡期に別会社を立てコッソリ動くのは仕方がないことかもしれません。しかし大手メーカーとなると話は別です。今回の件で大手メーカーが直販Eコマースサイトを出店した意図は正直わかりません。ただ、結果としてリターンよりもリスクの方が大きいと思うんだけどなー。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから