一年本気になれば景色は確実に変わる。あるホープ人財の話【no.1348】
この話は1年半で私が経験した実話である。
とある、上場企業のホープの話だ。1年半前、彼は数いる会社の若手社員のひとりだった。そこまで会社から期待されていたのかもわからない。もともとは契約社員として既卒で入った会社だ。エリートコース、出世コースを歩んでいたわけではないだろう。ただ、彼はいま確かに会社の中心のひとりになろうとしている―――。
*空気の読めない発言から人生が動き始める
1年半前のことだ。それまで1年以上の時間を費やして企画していたサービスのローンチが難しいと発表があった。その会議にコンサルタントとして私もいた。会社の取締役も含めた十数名の会議だった。今回のサービスのローンチは難しい。ただこのアイデアは捨てたくない。なんとか他社に協力してもらって、新しい形でサービスを立ち上げたい。そんな会議だった。
会議室が暗く、よどんだ空気になる中で、声をあげた人間がいた。会議室の一番端。マスのマスの席に座っていた彼だった。「サービスはまだ表に出せないけれども、インターネットを使って今の時点から見込みのお客様に情報発信することはできますよね?」。正直、その場の雰囲気からすれば空気の読めない発言だった。しかし、コンサルタントの私にも空気は必要ない。「いいですね。何ができそうですか?」。そこから彼の人生が大きく動き始めた。
*アイデアを出すということは、自分がやるということ
彼が提案したのはメディアサイトの立ち上げだった。サービスがローンチするまでに、メディアサイトの情報発信によってサービスアイデアの啓もう活動を行う。そしてその情報を見たお客様に見込みのお客様になってもらう。これだったらサービスが出来上がる前でも動けるはずだ。このアイデアが良いか悪いかではない。閉塞した空気の中で状況を変えようとする意見は、必ず取り入れなければいけない。でないと、状況を打破する次の案すら生まれないことになる。「やりましょうよ」。私も押した。
自分でアイデアを出すということは、多くの場合自分がやるということだ。だからアイデアを出すことを嫌がる人も多い。そんな中、彼はひとつの意見を出した。メディアサイト開設当初は苦労の日々が続いた。会社にとっての新規事業。しかも当初はそこまで既存事業とのシナジーがあるわけでもない。会社内からの「あれって意味あるの?」という逆風もある。上場企業とはいえ予算は潤沢ではない。だから、自分たちで頭を使って、汗水を流すしかない。
*景色はすぐには変わらないが、自分が思っているよりは早い
あれから1年半が経った。彼が立ち上げたメディアサイトは月間200万PVを超えるまでに成長をした。同ジャンルの競合メディアサイトのトップが200万~500万PVということなので、たった1年半でトップに追いついたことになる。この1年半、悩み続けそれでも諦めずに続けたからの成果だ。そして私が彼と話していていつも思うのは、あの日の会議室で先輩社員数十名の前で「まだまだできることあると思います!」といったシーンだ。
結果論かもしれないが、1年半前の会議室であの発言をしたのは彼だが、「自分はこうやった方がいいと思います!」と主張できたのは彼だけではないはずなのだ。全員が同じステージ、同じ条件の中で、「できることはあります!」と自己主張できたのが彼で、他のメンバーはそれをしなかった。そして1年半経ってどうか。彼は一直線に成長し、会社の未来を支える(かもしれない)ホープになっている。あの日が人生を分けたのではないか、私はそう思っている。
ひとはどうしても期待より不安を先に感じてしまう。永遠に続くように見える我慢を耐えることができない。だから多くの場合、スタートすることすらしない。彼が会社のホープに成長するまで1年しかかからなかった。実はたった1年、本気で努力をすれば状況はまったく変わるというのに。景色はすぐには変わらない。でも、自分が思っているよりは意外と早く変わるものなんです。
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