とあるBtoBの会社がインターネットを活用して事業を拡大する話。二【no.1202】
(前回はこちら)
「いいか。小林。飛び込みの新規開拓ってのは、ボディーブローなんだ」
*「インターネットを、使おうと思います」
飛び込みはボディーブロー。いますぐじゃなくてもいつか必ず効いてくる。それまで我慢をして何度も何度もアタックをする。社長がいつもいっているセリフだ。最後は「いままでもウチの会社はそうやって拡大をしてきたんだ」それで締まる。小林は社長のお決まりのセリフを終わりまで聞いて、それから思っていることをいった。
「でも社長。ウチの業績って下がり続けてるじゃないですか。いつボディーブローが効いてくるんですか。いまのやり方は否定しないですし、それで会社が成長してきたのも事実だと思います。けれど、いまのままじゃ『本当かな』って頑張りは続かないですよ」
こんな話になったのは初めてではない。一度や二度でもない。社長は小林を一瞥し、身体を自分のパソコンの方に向きなおした。そして呆れたような声でいう。
「仕方ないだろ。この業界自体の売上がシュリンクしているんだから。ウチなんか頑張っている方だと思うよ。大手なんてもっともっと大変だ。それともなんだ。小林にはもっといいアイデアがあるのか。営業マンってのは、足を使って汗水を流してナンボだろう」
足を使って汗水を流してナンボ、これも社長が良くいうセリフだ。間違いではないと思う。間違いではないと思うんだけれども、それだけでもないと思う。小林がいった。
「インターネットを、使おうと思います」
*毎年「新年のご挨拶」だけが更新される
インターネットの活用はウチの会社にとって古くから存在する懸案事項だった。社長自身も毎年度の計画に「インターネットの活用」を入れているのだけれど、「インターネット活用委員会」を設置して2、3回の会議をした程度で、特に何か具体的な策が決まってはいない。そんなことをこの5年間くらいやり続けているのだ。
「インターネット?ウチにはホームページがちゃんとあるじゃないか。しかも、インターネットを使ってお客様から注文をもらうってのは、対コンシューマー(消費者)のサービスを展開しているBtoCの会社のものだろう。ネットショップとかEコマースとか、ああゆうのだ。ウチができることなんて限られる。ホームページがあるだけで十分だよ」
インターネット活用委員会の最初の仕事はホームページの立ち上げだった。それは今の「インターネット活用委員会」ができるはるか前、10年前の話。会社のホームページがないのは今の時代さすがに無いだろうという話になり、社長の友達のホームページ制作会社につくってもらったのだ。途中からホームページの更新はほったらかしになり、毎年「新年のご挨拶」だけが更新されている。このままだと、今年もきっと1度しか更新されないだろう。
*気にはなるけれどどうすればいいのかがわからない、が本音
これ以上のことは必要ない、そういいつつも、社長がインターネットの活用について気にかけていることを小林は知っていた。社員には内緒にしているが(厳密にいえば、成果が出たらオープンにしようとしていたようだが)、去年SEO対策の会社に数十万円を支払い、ホームページにてこ入れをしていたのだ。気にはなるけれど、どうすればいいのかがわからない。これが社長の本音だと思う。
「社長。私がウチの会社でどんなインターネットが活用できるかを調べてみます。この1か月間、片っ端からインターネット関連のセミナーに参加してみます。来月、もう一回時間をください。ウチの会社に適するインターネット戦略をまとめてきます」
また小林のやつ威勢を張って。社長はそう思ったが、他にインターネットに意欲的な社員もいない。ここは小林に任せてみることにした。
つづきはこちら。
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