著者:石田 麻琴

「ECサイト←お客様」と「お客様→ECサイト」。この違いは?【no.2099】

 ECのマーケティングを理解するとき、必ず外してはいけない考え方があります。それは、「リアルビジネスとネットビジネスの違い」です。このリアルビジネスとネットビジネスの違いを「腹の底から」理解していなければ、必ずEC事業は成功しません。これは言い切ることができます。

「EC←お客様」と「お客様→EC」

 リアルビジネスとネットビジネス。ここではネットビジネスが「EC」になります。リアルビジネスは「実店舗」としておきましょう。「リアルビジネスとネットビジネスの違い」は「実店舗とECの違い」に他なりません。

 「EC←お客様」。多くの事業者はECというビジネスをこのように考えています。特に、これまで既存のメイン事業を成長させてきて、インターネットに新しい販売チャネルを展開する会社さん、つまりEC事業に取り組むほぼすべての企業は「EC←お客様」と考えているのです。

 ネットビジネスとして正しいのは、「お客様→EC」です。ここで、「EC←お客様」と「お客様→EC」。ふたつの構図を紹介しましたが、この違いがわかるでしょうか。

お客様が探すから、ECサイトがある

 「EC←お客様」と「お客様→EC」。このふたつは一見すると同じです。「EC」と「お客様」。関係性をもつふたつがあり、そのふたつが矢印で結ばれている。「EC←お客様」と「お客様→EC」もお客様をからスタートした矢印がECに向かっている点では一緒です。ただひとつ、このふたつの構図で異なっているのは「EC」と「お客様」の位置が逆であることです。ここが「リアルビジネスとネットビジネスの違い」「実店舗とECの違い」を理解するためのポイントです。

 「EC←お客様」。これは「ECサイトがあり、そこにお客様がやってくる」という考え方です。リアルビジネスを長く営んできた事業者のみなさんは、ECに対してこの考え方をしてしまいます。これは実店舗の考え方です。まず実店舗があり、そこにお客様がやってくる。考え方として何ら間違っていないように感じます。しかし、ネットビジネスは「お客様→EC」と考えなければいけないのです。

 つまり、「お客様が探すから、ECサイトがある」という考え方です。

「お客様に見つけられるか」が大切

 ECサイトはインターネット上のどこかに、確実に存在するものです。ただ、そのECサイトのことを知らなければ、どこに存在しているのかがわかりません。実店舗の場合は、存在そのものが見えないことはないでしょう。たとえお客様が入店したことがない実店舗でも、その存在は知られているものです。

 ECサイトは「お客様→EC」です。何かの目的をもってネット上で商品を探すお客様の目に、自社のECサイトや自社の商品ページが入らなければ、たとえECサイトを立ち上げていたとしても、「存在していない」ものと一緒なのです。もちろん、それは「お客様にとって」です。自社にとっては当然「存在しているもの」になります。ただ、「お客様に見つけられるか」が大切なのです。

まずは考え方を完全シフトさせること

 お客様にとって自社のECサイトが「存在しているもの」になるために日々改善をしなければいけません。これがECにおけるマーケティングです。お客様が「いつ、どのタイミングで、何を、どうやって探し、何を比較して」買うのか。これを日々考えながらECサイトの改善を繰り返し、最終的な売上につなげていくのです。

 ただ、この改善をするのは一歩先です。まず、ネットビジネスは「EC←お客様」ではなく「お客様→EC」であること。この考え方にECサイトのマーケティングを完全シフトさせなければいけません。リアルビジネスを展開してきた会社さんは「EC←お客様」の考え方が心底沁みついてしまっています。ECサイトがあれば、商品があれば、お客様がついてくると思い込んでいるのです。ここはECのチームメンバー同士、徹底的な注意が必要です。