著者:石田 麻琴

リアルからの顧客データ獲得手段として「レンタル」を考える【no.2093】

 ネット、リアル問わず、顧客データを土台にしたマーケティングが加速しています。今回のECMJコラムは、リアルからの顧客データをいかに蓄積するかという話です。

ネットが顧客データを活用できる理由

 ECに代表されるインターネットのビジネスは顧客情報の取得が比較的容易です。ECはECサイトでの購入の際、個人情報を入力しなければいけません。いわゆるアカウント登録(=会員登録)をしなくてもECサイトで商品は購入できます。しかし、個人情報を登録しなければ商品は届きませんし、決済ができません。ECが「顧客データを土台にしたマーケティング」に向いている理由です。

 それに対してリアルはどうでしょうか。リアルの場合、商品購入において個人情報の共有が必要ありません。コンビニでおにぎりを買うときに、個人のID(運転免許証)を提示する人はいません。個人情報の開示が必要ないことが、商品購入のハードルを下げている部分もあります。現実に、ECのお客様でもいまだに「クレジットカード決済は利用しない」方がいます。

 こと顧客データの活用という点においてです。個人情報を得ることができなければ活用のスタート地点にも立てないことになるのです。

リアルのビジネスでの顧客データの活用

 顧客データの活用が重要になる理由。それは新規顧客を獲得するよりもリピート顧客を育成する方が効率的だからです。日本の人口も頭打ちになり、ネットの活用も一般的になりました。新規顧客の獲得コストが上がり続けているという背景もあります。また、顧客データを分析することで効率的な顧客維持ができるという、情報テクノロジーの進化もあります。お客様の購買行動やお客様の変化にあわせて商品の提案ができるようになるわけです。

 ネットだけではなく、リアルのビジネスでも顧客データの活用が求められています。そして、前提としてリアルの場でお客様から個人情報を共有いただく戦略が必要です。リアルから個人情報を提供してもらう。そしてその個人情報を顧客データとして活用していく。なかなか簡単なことではありません。参考になるのはCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)ではないでしょうか。レンタルビデオ(DVD)店の「TSUTAYA」です。

「お客様が違和感をもたない」手法

 レンタルビデオ(DVD)店はいまでこそオンラインに完敗を喫していますが、以前は大きな市場でした。「レンタル」という業態ですから、信用とリスクのために個人情報が必要になります。元々はそのリスクヘッジや牽制のための「会員登録」です。それ対し、個人情報の「顧客データ性」に可能性を見出したのがCCCだったわけです。百貨店、コンビニ、スーパー。リアルの業態で取れなかった個人情報を唯一取れたのがレンタルビデオ(DVD)店でした。

 リアルからの顧客情報の取得として、販促をイメージする方が多いかもしれません。たとえば、「LINE登録してくれたら生ビール一杯サービス」など。もちろんこの手法は「刺さる人には刺さる」手法ではあります。しかし、お客様にとっての「必然性」がないことが課題です。そして、さらに課題なのは「競合他社でも『簡単に』真似できる」こと。差別性がないのです。

 そこでひとつの切り口です。「レンタル(貸出し)」を何らかの形でリアルビジネスに取り入れるのはどうでしょう。先に書いたとおり、レンタルには必ず個人情報が結びつきます。そして、個人情報の提供に対して「お客様が違和感をもたない」。ここがポイントです。私たちはTSUTAYAを利用する際、当然のように会員カードを持参します。それと同じようにです。この「お客様が違和感をもたない」がポイントです。