著者:石田 麻琴

「当たったか当たらなかったか」は「初速」でわかる【no.2075】

 Eコマースを含むデジタルビジネスの面白さは「データ」にあります。さまざまなセミナーやコラムで紹介した話ですが、GREEの田中社長の言葉が端的です。

 インターネットのビジネスって「何が当たるか当たらないか」はわからないですが、「当たったか当たらなかったか」はすぐにわかるんですよね。

「データ」による成果の数値化

 そうなんです。「何が当たるか当たらないか」は詰まるところわかりません。経験則や、それこそデータの積み重ねでわかるのは、あくまで「当たりそう」までです。物事にはタイミングがあるので、「100%当たる」なんて誰も言い切れません。もし仮に、「絶対に当たる」という施策を繰り出したとして、競合が同じことを同時にやってきたらどうなるでしょうか?やはり言えるのは「当たりそう」までなんですね。

 ただ「当たったか当たらなかったか」はすぐにわかります。つまり、その行動や施策をおこなった直後に、その成果は数値化されるということです。言い換えればデータ化ですね。行動や施策をおこなったことのお客様の反応は「データ」という形で定量的に表れます。お客様の反応は「100」なのか「10,000」なのか。それが瞬時にわかってしまうのが、デジタルのビジネスです。そして、この「データ」を上手く活用することこそ、デジタルビジネスの神髄です。

 「当たったか当たらなかったか」はすぐにわかる。この意図する部分のひとつは、「データ」による成果の数値化です。そしてもうひとつは、「初速」とも言えるのではないでしょうか。

「当たったか当たらなかったか」は「初速」

 以前、ECMJコラムに私がネットショップの運営者をやっていたころの話を書きました。ジュエリーの店舗にバッグを商品登録をしたところ、すぐに売れ始めた。サイトのトップページにも出してなく、メルマガで紹介しているわけでもないのに、すぐに反応があった。それまでのEC運営の流れと比較すると大変不思議な現象です。しかし、この「反応」こそが、大きなチャンスをつかむヒントなのです。田中社長の言葉を借りれば、「当たったか当たらなかったか」は「初速」でわかります。

 これはEコマースでいえば、新商品の発売や販促企画など、さまざま場所で起こります。とくに販促キャンペーンは「いつからいつまで」という期間設定をして開催しているショップが多いと思います。その開催期間をへて販促キャンペーンの評価をしても結構です。しかし、実際には販促キャンペーンを開催して2-3日、ある程度トラフィックがあるショップならば開催後数時間で評価をすることができます。

 オンラインショップの売上の公式として、「商品力×提案力×集客力」を紹介しました。「初速」が良い新作商品・販促企画はそもそもの「商品力」が高いということなのです。お客様の反応が早い理由はここにあるのではないかと考えられます。

「提案力」を加えても、大幅な転換は見込めない

 逆にお客様の反応が思ったより跳ね返ってこない場合です。つまり「初速」が悪いケースです。「商品力×提案力×集客力」の公式から考えれば、そもそもの「商品力」がお客様の反応に足りていない可能性があります。この場合、「提案力」部分を改善することによって、お客様の反応を上げるのがセオリーです。ただ、あくまで重要なのは「商品力>提案力」。「商品力」が低いものに「提案力」の改善を加えても、大幅な反応の転換は見込めません。次の商品、次の企画に早々に移るのも手です。

 もちろん、新商品の在庫をガッツリ仕入れてしまっているケースもあります。「商品力」がイマイチだとわかっても、「提案力」である程度サバいていかなければいけません。大切なのは、「商品力が悪い場合の提案力の対処法」を仕組化、ルール化しておくこと。「あれやって、これやって、最後はこうして在庫をなくす」をあらかじめ決めておくことです。ロスを仕組み的に最小限に押さえるフローをつくりましょう。時間は高い「商品力」のために費やす方が良いのです。