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市場ニーズと市場規模の判断方法とECの定例会議【no.2051】

 今回は「市場ニーズと市場規模の判断方法とECの定例会議」についてお話します。

ニーズがある打ち手は出した瞬間に反応される

 前回のコラムの最後にこのようなことを書きました。「『市場で勝てるか、どれくらいの規模に成長しそうか』は初速です。初速である程度判断することができます」。この「初速」というのが重要なキーワードです。市場のニーズは「初速」で判断することができます。

 EC事業において、日々マーケティング活動を展開し新商品の投入や販促企画など、新しい打ち手を日々投入されているかと思います。メルマガの送付やSNSでの情報発信含め、内的要因(自分たちがお客様に対しておこなったアプローチ)として打ち手を繰り出した際、「ジワジワお客様に効いてくる」というのはあまりありません。(無くというか「本当のジワジワなのかがわからない」)。お客様の反応の「初速」でその打ち手の効果を判断することができます。

 逆にいえば「初速」が悪かった場合、継続しても結果に効く効果的な打ち手としてあまり期待できません。「改善直後の『初速』」があまり良くなければ、そこまでの市場ニーズがなかったと判断することができます。本当に不思議なことです。市場ニーズがある打ち手は表に出した瞬間にお客様が反応してくれます。

「初速」の違いを知る上で大切なのは「感覚」

 以前の私がオンラインショップの運営者時代に体験した話を書いたことがありました。ジュエリーの専門店だったショップで、ハンドバッグを商品登録した瞬間、なぜかお客様から受注が入り出したのです。メールマガジンやインターネット広告で告知をしたわけではありません。ましてやショップのトップページやランキングに掲載したわけでもありませんでした。検索にヒットしたか、ショップを回遊しているお客様が見つけてくれたのだと思います。本当に売れる商品や販促は、なぜだか「初速」が違うものなのです。

 この「初速」の違いを知る上で大切なのが、「感覚」になります。市場の「初速」のスピード感や競合の「初速」スピードを我々が知ることはできません。自社の中の施策の比較から「初速の早い」ものを探していくしかありません。そのためにも、商品を登録した後の売れ方の状況やSNS投稿のリーチ数、広告掲載時のアクセス流入など、データを日常的にみておかなければいけないわけです。

広告をかけるか自分で判断をしないこと

 たとえば、新作商品についてある一定量の直接的な集客をかけることをルール化します。新作商品をオンラインショップに登録し販売を始めたその日から、10万円分の広告をかけトラフィックを流す、などのルールを設定するのです。そうすると、「初速」が早い商品がデータとして確認できるようになります。その数値がひいては新作商品の「商品力」の判断につながってくるわけです。経験上ですが、「初速の早い」商品の方が商品力が高い傾向にあります。

 このルールを施行するにあたって重要なのが、「自分たちで広告をかける判断をしない」ということです。こっちの商品は期待が薄いので広告をかけない。こっちは期待が高いので少し多めに。などと自分たちで判断しないことです。あくまでその新作商品の「商品力」を「市場に判断してもらう」。ここを徹底することが大切なのではないでしょうか。

定例会議を行動変化の機会にする

 EC事業を成長させるためには、時間とお金というリソースを投下しなくてはいけません。「お金を投下する」判断はできるかぎりデータを活用して、ある程度の「勝ち筋」が見えてからというEC運営を推奨しています。その分「勝ち筋」を見極めるための「時間の投下」をおこなうことになります。時間とお金、どちらを選ぶかということですね。両方選択せずの成長はありえません。

 リソースの投下を最適化、最大化するために必要なのが定例のマーケティング会議です。EC事業の成長のため、目標と現在地の距離を確認し、施策の振り返りと次の改善施策を検討する定期的な時間が必要です。ここでのポイントは「定期的」という部分です。実は会議の内容よりも「定期的」という部分が重要です。「できるとき」「時間があるとき」に会議をするようではいけません。定例会議をマイルストーンにして、行動変化の機会にしていきたいのです。

まずは定例会議の時間を決める

 そういった点で大切になるのは「定例のマーケティング会議の時間を決める」こと。まずは定例会議の時間を決めてしまいましょう。おすすめなのは火曜日の午前もしくは午後の1時間です。1週間のはじまりといえば月曜日ですが、EC事業の場合、週末の受注処理・発送処理・お客様対応を月曜日に対応しなくてはいけないので、月曜日の業務量が多くなります。また、月曜日は祝日や振り替え休日になる機会もあります。そのたびに定例会議をリスケしていると会議自体の習慣化が難しくなります。「今週はできなそうだから来週でいいか」。この時点で「定期的」の原則が崩れてしまうのです。

 定例のマーケティング会議で確認する内容はシンプルです。

 まずは目標数値と現在地を確認すること。設定している年商と月商そして現時点での目標数値に対する進捗率を確認します。仕事の成果の評価というのはこの「目標数値」を基準にして判断することになります。目標数値を超えているならば極端にいえば現状の良い状況を継続していけばいいです。目標数値を超えていないならば「ではどうするか?」を考えれば良いだけです。目標数値を超えているのにも関わらず、お尻を叩き続ける経営者や責任者がいます。そうであればまず目標数値を上げた方が良いです。

決まったことを「決定事項」として書き残す

 そして全体のスケジュールの管理。中長期的にテーマになっている課題の進捗の確認、前回の定例会議で挙がった決議事項(宿題)の進捗の確認です。課題の解決が必要であるにも関わらず、進捗が滞っている場合です。そのボトルネックになっているのは何なのか、他の方法で解決はできるのか。こちらを議論して宿題を再設定、スケジュールを書き換えます。ここで大切なのは、決まったことを「決定事項」として書き残すことです。決まったのか決まってないのか、誰がいつまでにやるのか。アイデアが浮かんだだけで終わってしまう会議が多いですが、それはもったいない時間です。

 さらにデータを見ること。日々の改善施策とその成果であるデータを確認し、原因と結果の因果関係を整理します。「内的要因と外的要因」の整理はここでおこないます。データに対しての「原因」の情報を収集し整理することで改善施策が見えるはずです。

定例会議の細かなポイント

 前回のコラムでは、定例のマーケティング会議を開催しましょうという話をしました。日々の改善活動が数字に結び付いているのかを振り返る時間が定期的に必要です。また、作業の手を休め新しいニーズへの気づきや感覚を共有する場も必要でしょう。習慣的にマーケティング会議を開くことで、EC事業のマイルストーンとなり、事業全体に「リズムが生まれる」効果も見逃せないところです。

 定例のマーケティング会議の内容については前回のコラムで紹介したとおりです。今回は定例のマーケティング会議の細かなポイントについて説明をしたいと思います。

ひとつの会議のメンバーは6名から7名まで

 まず会議に参加するECチームメンバーの人数です。私がおすすめするのは1チーム6名か7名まで。ひとつの会議に参加するのはこの人数が理想です。ECの中小事業者の場合、この6名~7名というチームの人数は問題ないとは思います。問題はメンバーが30名40名になったEC事業部ではどうするかです。

 ECチームが30名40名といった人数になった場合、マネジメントや店長職(オンラインショップの責任者)といった中間層のポジションができると思います。この中間層のポジションで6名~7名の定例会議を開催します。そしてその中間層のリーダーを軸にして6名~7名で定例会議を開催するのです。あくまでこの6名~7名という人数を守ることをおすすめします。

 チームとして議論しアイデアを出し合い、その後の施策に各々が責任を持つ場合、8名以上のチームではその意識がバラけるからです。目標に向かって議論するためには、ミニマムな単位でのまとまりが要求されます。その最小単位が6名~7名というわけです。8名以上のメンバーが定例会議に集まると、話の輪から漏れたメンバー同士が会議机の端っこで話をしていたり、端に座ったメンバーが携帯電話を触っていたりといった状態になります。

実行メンバーのみで定例会議を開催したい

 また、マーケティング活動を実行するメンバーのみで定例会議を開催することです。チームリーダーがファシリテーターとなり、マーケティング会議を進めていきます。会議メンバーの中に「実際に実行をしないメンバー」が紛れていると、議論やアイデアの責任が保たれなくなります。経営層が会議に参加するケースもあると思います。その場合はできるかぎり意見を出さないことです。経営層の意見は「強すぎる」ため、メンバーの意見やアイデアが「お客様に向けた」ものではなく「経営層を意識した」ものになる可能性があります。

 あとは、データ活用の部分でも説明したことです。マーケティング会議では同じ数値項目を継続して見続けていきましょう。定例会議のたびに確認する数値項目を変えてはいけません。同じ数値項目を追うことで変化を感じ、その変化の要因を探す習慣がついていくのです。

 「ひとつの会議で人数は6名~7名」。「実行しない参加者はオブザーバーで」。「データ活用は同じ数値項目をウォッチする」。これらをポイントとして覚えておいてください。

まず指標にしたいのは年商10億円

 EC事業をスタートするとき、どれくらいの事業規模を想定するでしょうか。期待値でも構いませんし、絶対に達成したい規模感でも構いません。ここは会社さんや経営者の考え方によって様々な意見があると思いますが、まず指標にしたいのは年商10億円ではないかと思います。年商10億円という規模感が中小EC事業者にとってひとつの目標値になるのではないかと。

 もう少し因数分解をしていきましょう。年商10億円は月商にすると約8,000万円です。日商だと約300万円。客単価が1万円のショップであれば1日に300件の注文が入ることになります。客単価が5,000円のオンラインショップであれば1日の注文は600件です。インターネット広告を活用した際や、メディアに自社の商品が紹介された際に1日300件、600件の注文を受けたことがある事業者の方も多いのではないでしょうか。その状態が毎日つづくイメージです。

年商10億円は遠い数字ではない

 1日300件の注文を受けるためのアクセスと転換率(コンバージョン率)の目安です。転換率が5%のオンラインショップであれば6,000アクセスで300件の注文を実現できます。転換率が3%であれば10,000アクセスです。意外と多くない感じがしてこないでしょうか。年商10億円の半分や1/3程度まで到達している事業者の方もいると思います。年商10億円はそれほど遠い数字ではないのです。

 美容や食品、ガジェット系の商材など、単品をひたすら売り続けられるモデルのEC事業では、ひとつのヒット商品が生まれれば年商10億円に到達するケースもありえます。もちろん提案力の強化や集客戦略は必須になりますが1商品生み出せばいいのです。ヒット商品を多数生み出すわけではないと思うと気持ちが楽になると思います。

まずは年商10億円を目指す

 ファッションや雑貨、ベビーなど多くのSKUが必要になる商材の場合、お客様の趣味嗜好の多様性が広いので特定のターゲットに絞ったオンラインショップを複数つくることが重要になります。オンラインショップ1店舗、1ブランドで年商10億円を達成するのではなく、年商2億円(月商2,000万円)のオンラインショップを5つ、5ブランド立ち上げることで年商10億円を達成するイメージです。もしすでに自社のオンラインショップが年商2億円規模に到達しているならば、新しいブランドを立ち上げてみるのも良いかもしれません。

 年商10億円は市場に合わせて自分たちを変化させることができればけっして無理な事業規模ではありません。まずは年商10億円を目指しましょう。

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