著者:石田 麻琴

自社サイトを柱にするためのEC成長ポイント【no.2040】

 ECMJコラムは2013年8月にスタートしました。開始から9年近くが経ったわけです。しかしいまだに残っているのが、「自社サイトでEC事業をおこなうか。それともショッピングモールでECをおこなうか」の課題です。

終わらない自社サイト&モール問題

 ネットショップの運営者をやっていた時代から17年。ECMJをはじめてから11年が経とうとしています。いまだにショッピングモールは存在し、自社サイトにとって変わることはありません。「ショッピングモールはなくなるのではないか?」。「楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon以外のショッピングモールが台頭」。なんて話が以前はありましたが。

 自社サイトを選択するか、それともショッピングモールを選択するか。それとも並行してEコマース運営を進めるのか。その判断は企業の規模やサービスの認知度に関わるところです。まずは自社サイトとモールのメリットとデメリットをおさらいしておきます。

「指名検索」がモノサシになる

 自社サイトのメリットは自由度です。自社の商品やサービスに合わせたショップを設計することができます。またモールでのEコマース事業のようなロイヤルティがかかりません。デメリットは個人データ入力のハードルが高いこと。お客様が買いづらかったり、モールの販促に負けてしまうことがあります。

 ショッピングモールのメリットは売りやすさです。モール自体が主体となって販促や集客をしてくれます。知名度が低いネットショップにもお客様が流れてきます。お客様はショッピングモールに会員登録をしてくれています。個々のネットショップへの個人データの入力は不要です。逆にデメリットはロイヤルティがかかること。そしてショッピングモールの販売ルールに従わなければならないこと。購入したお客様の顧客データは、基本的にはモールのデータです。

 まず大筋の考え方です。企業や商品、サービスの認知があるなら「自社サイト」でのECを選択。あまりない場合は「ショッピングモール」のECの選択。これが基本路線です。もちろん自社サイトとショッピングモールの両方でのEC運営でも構いません。「認知度」については判断基準が難しいところですが、WEBサイトの「指名検索」がどれくらいあるか、がひとつのモノサシです。

「ブランドを築いている」会社なら自社サイト

 EC事業をおこなう際、取り組みやすいのがモールでのEコマース運営です。難易度が高いのが自社サイトでのEコマース運営といえます。モールECは、モール自体に会員がいるためネットショップへのアクセスも注文も比較的早めに受けることができます。EC運営の実践と効果が見えやすいため、次の行動につなげやすいのが良いところです。逆に、自社サイトの場合はアクセスも注文もない、無風状態がつづくこともあります。

 自社サイトを成功させるには、その存在が何かしらの価値がなくてはいけません。モールで月商数千万円、年商数億円の実績をあげているEC事業者でも、自社サイトで月商数百万円というのもざらです。いかに「自社サイトの存在価値」が大事かがわかると思います。シンプルにいうなれば「ブランド力」かもしれません。

 まず自社サイトの成功しやすいパターンは「ブランドを築いている」会社のEC事業です。実店舗なり商品なりでリアルのブランドを築いていれば、自社サイトを立ち上げてすぐ売上につながります。なぜなら、お客様側はネット上でそのブランドについて検索をしているからです。お客様にECで購入する欲求があるならば、ECのスタート時点で売上につながります。

「オリジナル商品」「高い利益率」は欠かせない

 リアルのブランド力がなくても、自社サイトが必ず失敗に終わるわけではありません。ネット上でブランドを築く方法もあります。D2C企業などは、ネットで物販のブランドを築いていく会社さんです。そこに必要なのは、尖ったコンセプトと尖った商品。そしてそれをネット上で認知してもらうための情報発信になります。少なくとも自社オリジナルの商品であることは条件のマストです。そして、高い利益率の商品であること。商品原価率が40%以下であることが望ましいところです。

 自社サイトはちょっとした販促ではショッピングモールには叶いません。モールのポイント施策は全店対象ですから、「自社ポイント」のインパクトはモールよりも弱くなります。むしろポイントという土俵で戦うことは避けるべきです。

 自社サイトで「売れる」ケースは様々なれど、「必ず売れる」方法はなんとも言えません。しかし成功に辿りつくために「オリジナル商品」「高い利益率」は欠かせない条件です。モールECからのスタートでも、この部分は常に意識しておきましょう。

Eコマース事業を成長させるのはいつでも商品

 EC事業を成長させるために重要なのは一にも二にも商品です。なぜならば、Eコマースが物販だからです。お客様はあくまでモノを買うことを目的としてネットショップを探します。ブランドサイトとECサイトを混ぜたようなショップが、売上がないのはそれが理由です。お客様はあくまで商品を買いにきています。商品力がなければサイトに演出を加えても意味がない。これは十分理解しておきたいところです。

 Eコマース事業を成長させるのは商品です。もっと言えばネットショップの柱になるヒット商品をどれくらいつくれるかです。そして、ヒット商品を大ヒット商品・メガヒット商品に育てることができるか。これがEコマース事業の成長のポイントになってきます。

 ネットショップのブランド価値や企業の認知をあげるのはヒット商品が出た後です。人はブランドを知り商品を知るのではなく、商品を知ってからブランドを知ります。ヒット商品が売上の柱になり、お客様を集めるための集客導線にもなります。

ヒット商品をつくるふたつの方法

 ではヒット商品をいかにしてつくり上げるか。ここにはふたつの方法があります。ひとつはある程度の予測を立てた上で商品数を増やし、そのアクセスと販売状況のデータ分析を重ねながらヒット商品を探していく方法。もうひとつは市場のデータ分析を強化し、一定のニーズがあるものをつくり込んで販売する方法です。

 前者は販売商品数の中からお客様のニーズを探っていくのが特徴です。後者は販売前に市場分析を済ましてしまうのが特徴です。難易度でいえば「後者>前者」。まず前者の体制をつくり、後者の商品企画の考え方にシフトするのが良いでしょう。

 Eコマースのビジネスの成長のセオリーはとてもシンプルです。お客様や市場にとって良いと思われることを10コ挙げ、その10コをやってみる。そしてその10コの成果をデータで定量的に検証する。結果が出ている5コを残し、結果が出ていない5コを捨てる。また新しい5コのアイデアを出す。結果が出ている5コと新しい5コの合計10コをやってみる。そしてその10コの成果をデータで定量的に検証する。これを繰り返していくのです。

 繰り返していくと「より結果が出ること」しか残らなくなっていくはずです。やってはいけないのが「10コのアイデアを主観で1コに絞ること」そして「10コやった後に成果をデータで検証すること」この2つです。多くの会社のEC事業が2つのポイントを徹底できていないためにつまずいています。

いかにEC運営を効率化させるか

 EC事業を展開する中で、幅広い運営業務を日々こなしていくことになります。実店舗ならお客様は陳列棚から商品を自分で取ってくれ、レジに持ってきてくれます。レジで決済をした後は、購入した商品を自分で自宅までもって帰ってくれます。EC事業は、商品を陳列するために商品ページを作成しなくてはいけません。お客様が商品を購入した後は、商品を梱包し発送しなければいけません。

 Eコマースの運営業務は基本的にパソコン上でおこなわれます。ですから、システムやツールの活用、仕組み化によって効率化することが可能です。EC運営業務は幅広い、しかし仕組み化をすることが可能だとおぼえてください。逆に、EC事業において商品を1点1点登録したり、1点1点の受注作業をおこなうことはロスになります。リアルビジネスからネットに取り組んだ会社に多くみられる傾向でもあるので注意です。

ECの7つの運営業務

 Eコマース事業の仕事は大きく分けて7つに分けられます。

 ひとつは商品企画/商材開拓。ショップで販売する商品をつくるか(商品企画)、それとも仕入れるか(商材開拓)です。Eコマース事業において最重要の仕事になります。次に、WEB制作。サイトの構築、商品ページの画像やテキストなどコンテンツの作成も含まれます。そして集客。お客様にネットショップへアクセスしてもらうための仕掛けをつくる仕事です。最後に運営。販売スケジュールを元にネットショップの更新作業を進める仕事です。主にメルマガなどですね。この4つが「商品を売るため」の仕事になります。

 「商品を売ったあと」の仕事が3つあります。ひとつは受注管理/システム管理です。お客様からいただいた注文を管理する仕事。データベースの運用や情報管理のセキュリティもこの仕事に入ります。次に物流。注文いただいた商品をお客様に発送する仕事です。そしてカスタマーサポート。お問い合わせ電話、メールの対応。返品や交換に対応する仕事もこの中に入ります。運営業務としてはこの7つですが、決済に関する入金管理の仕事、運営担当者の採用なども加えるとさらに幅が広がってきます。

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