著者:石田 麻琴

SNSが変えたECにおけるリアル活用ニーズ【no.2017】

 最近EC事業者におけるリアルの活用ニーズが増えてきました。今回のECMJコラムはリアルイベントの価値について。

2010年ごろのリアル活用

 実はEC業界において、過去に催事イベントや実店舗の出店が流行った時期がありました。私がちょうどECMJを設立した頃なので、2010年を過ぎたあたりでしょうか。たしか楽天市場も渋谷にポップアップショップ的なものを構えていた時期がありました。

 その目的のひとつは実店舗でお客様に商品を手に取ってもらいたことです。やはりオンラインショップでは商品を実際に手に取ることができません。アパレルや貴金属であれば自分の身体に合わせてみることができません。食品であれば試食をすることができません。オンラインショップだけで伝えられる情報には限界があるのです。

新しい集客導線として注目

 また、EC市場の「需要と供給」のバランスが大きく変化したのも理由としてあります。「需要>供給」の時代から、「需要=供給」の時代に。そして2010年ごろから「需要<供給」の時代にシフトしていきました。「買いたい人よりも、売りたい人が多い」時代です。

 「需要>供給」の時代のマーケティングの中心は広告戦略でした。とにかく売れる商品を広告で売りまくる。大味な戦略です。ただ「需要<供給」の時代には大味な戦略は通用しなくなります。当然、広告の費用対効果が悪くなります。そして新しい集客導線として選択されたのが催事イベントや実店舗の出店でした。

SNSの存在価値が以前と異なる

 最近のリアルイベントやPOPUPショップの傾向です。EC事業者の中でも特に「D2C(Direct to Consumer)」事業者の出店が多いように感じます。その中でもインターネット発のD2Cブランドです。元々メーカーや問屋などの事業をやっていた会社さんではありません。デジタルのスキルをベースにした物販事業者というイメージでしょうか。

 2010年ごろに一時的なトレンドになったリアル出店と現在のリアル活用との明確な違いは、SNSの存在価値です。2010年のSNSはTwitterが広がりはじめ、Facebookはまだ日本に登場したばかり、Instagramに関してはサービスがスタートしたこと自体が2010年の10月です。まだSNS自体がアーリーアダプターのもので、一般化に入るか否かというところ。当然、ECでの活用は未熟でした。

ブランドを実体験してもらう

 2010年ごろは「Sコマース(=ソーシャルコマース)」という言葉が若干のバズワードになりましたが、その時点でSNSで商品が売れることは結果的にありませんでした。しかし紆余曲折あり、10年後の現在はSNSで情報を取得し、SNS経由でECサイトを利用する時代です。また、個々人の発信力も10年前と比べると桁違いになっています。

 催事イベント、実店舗、POPUPショップなど、現在のリアル活用のポイントはSNSで繋がっているフォロワーにブランドを実体験してもらうことです。商品やサービスを実体験してもらうことでブランドとの関わりを深める。そしてよりブランドのファンになってもらう。その結果として、フォロワーにブランドを作り、ブランドを発信してもらう「一員」になってもらうことだといえます。

 リアルの活用は以前のような「売上目的」「集客目的」ではないということです。

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