ネットにあってリアルにない概念は、更新です。ECのベンチャー企業を卒業し、コンサルティングをスタートして最初に戸惑ったのは更新の概念でした。
「データをとって毎日カイゼン」が重要
ECMJのコラムでもたびたび書いているのが「データをとって毎日カイゼン」です。ECのマーケティングはそれこそ「データをとって毎日カイゼン」が重要になります。データをみて改善を施し、その成果をデータでみて次の仮説を立てる。この繰り返しがEC事業を成長させていきます。
この「データをとって毎日カイゼン」の考え方の根源にあるのが「データをとる」ことです。そしてこのデータをとることがリアルの世界では容易ではありません。さらに「カイゼンする」こと。これもリアルの世界ではネットの世界ほど容易ではないのです。多くの場合、リアルの世界では「出すまで」が勝負になります。
リアルは出した時点で「成果が決まる」
以前、紙通販をメインにしていた通販会社さんのコンサルティングをおこなっていました。カタログ通販です。カタログ通販はわかりやすく「出すまで」が勝負の事業だといえます。どのような商品を載せるか。どのようにカテゴリ分けをするか。デザインとレイアウトはどうするか。どの順番で商品を載せるか。ページ数は200ページにするか、300ページに拡張するのか。写真はどの写真を使うのが良いのか。
過去の実績や経験、トレンドからの予測を加味してカタログを1ページ1ページつくっていきます。売上につながっている1ページ1ページを決断していく仕事です。内容と構成を決め、カタログを印刷に出した時点で、ある意味「成果が決まってしまう」仕事とも言えます。まさに「出すまで」が勝負です。印刷してからミスを発見すると大変ですよね。
EC事業は「出してから」更新が勝負
しかしEC事業の場合はこのようにはなりません。「出すまで」が勝負ではなく、「出してから」が勝負です。もちろん商品企画やロット発注など、「出すまで」が勝負の部分もあります。ただ、カタログ通販の紙面、オンラインショップでの「商品ページ」は出してから変更することが可能なのです。過去の実績や経験、トレンドからページを決断し出してみる。そこから得られたデータをどう活かすかがポイントになります。つまり、更新の概念です。
カタログ通販の会社さんがEC事業に取り組むとき、まず引っかかってしまうポイントがここです。これまでの仕事から「出すまで」が勝負の習慣がついているため、「よく考えてから表に出す」クセがついてしまいます。結果、思ったよりも商品が売れなかったり、熟考を重ねた末にもっとも売れるタイミングを逃してしまったりするのです。「ネットは出してからも変えられる」そして「出してからが勝負」です。
ECビジネスの考え方は非常にシンプル
ECビジネスの考え方は非常にシンプルです。10コ施策をおこなって、その10コの施策の結果を定量的に評価します。上位の5コを残し、下位の5コの施策をやめてしまいます。上位の5コの施策に、新しい5コの施策を加えた10コの施策をおこないます。そしてまた、10コの施策の結果を定量的に評価し、下位の5コをばっさりと切るのです。
これを繰り返していくと、定量的に結果が出ていると判断できるものだけが残り続け、そのクオリティがアップしていきます。ECビジネスとは極端にいうと、ただ単にこれだけなのです。
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