今回はオンラインセミナーの未来について考えていきます。
新型コロナウィルスの問題が起こって以降、リモートワークとオンライン会議の仕組みが各社に整う中で、本格的に取り組みがスタートしたのがオンラインセミナーです。展示会やイベント、講演会といったリアルの場での開催が難しい中で、オンラインセミナーの開催が流行り始めています。いまでは当たり前のように毎週オンラインセミナーを開催している会社もあります。
過去にもオンラインセミナーというものがなかったわけではありませんが、あくまでリアルのセミナー・講演の付属品であり、リアルのセミナー・講演を撮影してそのままオンライン上で放送しているのがオンラインセミナーの基本的な形でした。リアルの場がつくれなくなったことで、オンライン専門のセミナーになっているわけですね。
前述したとおり、オンラインセミナーをすでに毎週のように開催している会社もあります。オンラインセミナーの良いところは開催のしやすさ。オンラインセミナーのシステムの導入、カメラやマイクなど機材の準備、進行やプログラムをどうするか、などスタートの段階で模索することは多いのですが、一度設備が整うと開催のハードルが一気に低くなります。
セミナー会場は借りなくて良いですし、受付の人員も必要ありませんし、少人数でも開催できます。アフター/ウィズコロナ以降、講師に限らず受講者側の「リモート慣れ」もどんどん進んでいくでしょうから、自宅で私服で堅苦しくなくオンラインセミナーをしていても違和感のない状況になっていくはずです。気になるのは通信環境くらいでしょうか。
というように、爆発的に流行り始めたオンラインセミナーではあるのですが、気になるのが今後の未来です。
1日に多数のセミナーを開催していた、いわゆる「イベント的」「カンファレンス的」な大型セミナーでは、オンラインセミナーの開催に際し、セミナー内容を事前に撮影するところも出てきました。複数のセミナーが同時に開催されるイベントではトラブルも頻発しますから、スムーズな進行のために事前の撮影はたしかに価値があります。ただ、そうなると「単なる動画なのではないか?」という疑問がわいてきます。
またオンラインセミナーの講演を動画撮影し、後日YouTubeなどの動画プラットフォームやイベントのWEBサイトに掲載するところもあります。オンラインセミナー当日にスケジュールが合わなかった方、再度セミナーを視聴したい方用の措置ではあるのですが、「後ほど視聴できるのならば、イベント日に視聴する意味は何か?」という疑問がわきます。
オンラインセミナーの傾向として、「事前撮影」「後日共有」が普通になりつつあります。いずれも多くの方にまとまった情報を提供するためのポジティブな対応なわけですが、懸念されるのは「いつでも見られるものは、いま見る必要がなくなってしまう」ということです。
オンラインでないこれまでのリアルでのセミナー・講演は「いまそこに足を運ばなければ得られない情報」だからこそ重要性があったわけですし、だからこそわざわざ時間と交通費を割いて市場での差別化の材料を探していったわけです。我々がオンラインセミナーを頑張れば頑張るほど、悲しいかな「情報価値」はゼロに近づいていくのです。いまのオンラインセミナーの流行は間違いなくこの方向にあります。
とはいえ、オンラインセミナーの文化が生まれて実質ゼロ年目という状況が今です。ある程度オンラインセミナーに慣れてきたところで、オンラインセミナーが提供する価値、リアルのセミナーが提供する価値を改めて考え直し、「自社独自のノウハウ」をつくることがポイントになりそうです。