著者:石田 麻琴

「当事者意識」を持ってもらうことはできるのか?【no.1840】

 「当事者意識を持ってもらうことができない」。多くの経営者やマネージャーが抱える悩みかもしれません。

 スタッフの皆さんに何か課題を与えても自分からアイデアを出してこない、仕事を自分から取りにいかない、できるだけ責任を避けようとする。一般的に「当事者意識がない」とはこのようなことを指すのではないかと思います。

 今回のECMJコラムは「いかにして当事者意識をもってもらうか」についてです。

 まず前提として理解しておかなければいけないことがあります。組織やチームでの位置づけ、関係性がある程度出来上がってしまうと「改めて当事者意識をもってもらう」のが難しくなるということです。

 あるプロジェクトチームが2年前に発足して同じメンバーで事業運営を進めている。すでに2年以上取り組んでいるのだがいっこうに「当事者意識」が芽生えない、どうすればいいか。このようなことに悩んでいるマネージャーさんがいるとします。こういった場合、すでに「2年間」で組織・チームの関係性ができている以上、いきなり「より当事者意識を持ってもらって」なんてのはメンバーにとってスルー対象なのです。

 当事者意識を持ってもらうためには環境を変える必要があります。「今までとは同じではないんだよ」と関係性を切り替えることができるからです。マネージャーの交代やメンバーの担当の入れ替え、異動などはそのための手段としても使うことができます。「きっかけ」がないと前提条件は変えられないのです。

 社内で唯一、「前提条件をひっくり返す」ことができる人間がいるとしたら創業者社長です。創業者社長は「何を言い出してもおかしくない」存在です。これは創業者以外の二代目、三代目の経営者は難しく、先代の経営者のころから働いているスタッフがいる場合はなおさら難しくなります。

 つまりここまでをまとめると「当事者意識」を持ってもらうためには最初が肝心ということです。最初に「当事者意識」を持ってもらうことができなければ、それ以降「当事者意識」を持ってもらうことはできません。ただし、「スタッフの方本人の価値観が変わる出来事」が起こった場合は別です。人は「他人に言われ」ても変わりませんが、「自分で気づく」と一発で治ります。

 さて、最初に「当事者意識」を持ってもらうためにはどうすればよいかです。これはチームとしてのビジョンや目標、期待をメンバーに伝えた上、メンバー個々人の「琴線」にいかに触れられるかがポイントになります。私個人として気にしているのは、メンバーの意見や思いをしっかり聞くこと、会社に対する不満なども一度吐き出させてあげることなどです。

 自分の状況、仲間の状況を悪くしたいと思っている人は基本的にいません。自分が仕事を頑張るにあたって「何か引っかかる点」があるからこそ「当事者意識」が低くなる(見える)わけです。ここを聞き出し、何かの解決策を一緒に考えることで、逆にいえば「もう少し当事者意識を持ってできるよね」という踏み絵を踏んでもらうわけです。これは外部のコンサルタントだからこそできることだとも思います。

 最後にもうひとつ。必ずしも「当事者意識を持ってもらう」ことが必要かという話です。スタッフの皆さんに当事者意識を持ってもらえればそれに越したことはないですが、「淡々と仕事を進めたい」というスタッフの方もいます。「当事者意識がないから数字が上がらない」は経営者やマネージャー側の言い訳であるケースもあります。

 話はシンプルです。「当事者意識がなくても回る」仕組みをつくればいいのです。ポイントは通常業務のルール化とルーチン化です。仕事の進め方を整理し、数字に繋がる業務フローにルール化し、「毎朝30分時間を取ってこれをお願いします」です。これは「悪いこと」ではありません。