楽天市場の送料無料ライン3,980円が3月18日から施行されることが正式に決定しました。楽天市場に出店している方はご存じのことだと思います。
これはこれまで出店店舗ごとが独自で設定していた送料無料のラインを、楽天市場として「3,980円以上の購入は一律送料無料」に設定するもので、3月18日からは楽天市場のシステムで自動的に3,980円以上の購入が送料無料になることになります。
*一律の送料無料を設定することの背景
楽天市場の長年の脅威はAmazonであって、楽天市場からかなりのお客様、売上が取られているというイメージを持っているのだと思います。楽天市場に出品されている商品を同じ倉庫に集める構想や、商品画像の規定を変え白抜き画像を推奨しているところも、Amazonの成功モデルを踏襲している感があります。そして送料の改善に至ります。
現在の楽天市場では出店店舗が送料を独自で設定するシステムになっており、「5,000円以上の購入で送料無料」「送料込み価格」など、店舗が販売モデルをつくっていました。ただ、この仕組みはお客様側からすると少々わかりづらく、商品購入の際、店舗ごとに毎度送料規定を確認しなければいけないというストレスもあります。一律の送料無料ラインをもたせることで、このストレスを無くそうというのが狙いです。
*楽天市場出店者への影響と対策
この一律の送料無料ラインの設定は楽天市場を利用するお客様にとってはメリットなのですが、楽天市場の出店者側にとっては少々難問です。なぜかというと(ここもご存じのとおり)無料になる送料の負担は出店者側がおこなうことになるからです。仮に3,980円の購入で送料無料になるとすると、原価(仕入れ)率が50%の店舗であれば600円程しか利益が残りません。いままでならば1,400円程は残っていました。
楽天市場の出店者におけるひとまずの対策としては「価格転嫁」ということになります。現状販売している商品の販売価格をすべて(もしくは一部)調整し、送料無料ラインによって負担になる利益を確保するという方法でしょう。もちろん根本的には、自社オリジナルで付加価値の高い高利益の商品やサービスを開発し続け、市場の変化に負けない(先んずる)モデルを作っていくことが大切なのですが、2か月で簡単に実現できるものでもありません。
*Eコマース市場への影響とチャンス
出店者側の立場から考えると、どこからか商品を仕入れて販売をしている「小売り」一辺倒のネットショップはさらに継続が厳しくなっていきます。実店舗などリアルでの認知や導線がないインターネット専業(楽天市場専業)のネットショップならばなおさらです。ネットとリアルを分断するのではなく、ネットとリアルを融合させたマーケティング戦略の練り直しが必要になりそうです。「小売り」は「お客様のニーズ」をよく把握しているはずですから、そこを有効に使っていきたいですね。
出店者側だけではなくもっとマクロな「Eコマース業界の変化」と考えると、今回の送料無料ラインの設定により「価格転嫁」の方策を取る出店者が増えるとするならば、お客様からは「楽天市場価格」という見え方になるため、AmazonやYahoo!ショッピングへの顧客流出に繋がりそうです。また、出店側の大きな課題であった「自社サイトへの移行」を進めるための機会にもなります。
「ピンチはチャンス」と100%ポジティブにカッコよく言えるわけではありませんが、毎度ECMJコラムで書いているとおり「変化」はお客様が「他を探すきっかけ」「いつもの習慣を見直すきっかけ」になるのでチャンスに変えうる可能性があります。お客様が何を見ているか、何を魅力に感じてくれているかを今一度考え、見直すタイミングにできると良いと思います。