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プライシングは商品力・サービス力で決める【no.1743】

 プライシングという言葉があります。日本語でいうと「値付け」のことなのですが、「この商品をいくらで売るか」「このサービスをいくらで出すか」というのはなかなか奥深いところです。目標としては「売上と利益が最大化」を狙ってプライシングをするわけですが、コロコロ値段を変えたり、同条件で比較をしたりすることがなかなかできないので困ってしまうのです。

*売れる価格の最大の価格で値付けする

 もう8年程前のことになりますが、前職のEコマースのベンチャー企業で働いていたときに社長に教えてもらったのは「売れる価格の最大の価格で値付けをする」ということでした。もしかしたら細かい条件がついていたかもしれませんが、この言葉がとても印象に残っています。「売れる価格の最大の価格」といっても、「1人のお客様だけが購入してくれる価格」だと仕方がないので「一般的なお客様が納得してくれる最大の価格」という意味だったのだと思います。

 なんですが、これもなかなか難しいわけです。たとえば商品の価格レンジが「1,000円から5,000円」という狭い範囲だった場合、「これは1,900円だな」「これは3,480円かな」というように感覚的に値段が思い浮かんでくるようにはなるのですが、価格レンジが「1万円から100万円」とかになるともうどうすればいいかがわからなくなります。

*原価から価格を決めるという考え方

 シンプルなのは原価から価格を決めるという考え方です。たとえば小売りのビジネスをしているならば仕入れ価格の2倍の値付けを付ける(商品原価50%、粗利率50%)というようなのがシンプルです。制作会社やシステム会社の開発の場合、開発の工数を原価として計算しそこに一定%の粗利をのせてサービスの価格にします。こうすると原価と粗利のパーセンテージが安定しますから、計画的な経営がやりやすくなります。

 ただ、このプライシングの邪魔をするのが市場価格、市場相場というものでしょう。自社では仕入れ価格の2倍の値付けをしたとしても、同じような商品や同じようなサービスが1.5倍の価格で販売されていたとしたら価格競争力がないということになります。プライシングにおいて市場価格と市場相場が大きく関わってくるということを認識しておかなければいけません。「この価格だったら絶対競合のサービスを選ぶでしょ」というアレです。

 まあ、この原価から価格を決めるというのはシンプルですし、全スタッフに徹底することができるので良いのですが。なによりみんなが迷わない。

*商品力・サービス力から価格を決めるという考え方

 もしかしたら前職の社長も本質的にはこれが言いたかったのかもしれません。その商品がもつ「商品力」やそのサービスがもつ「サービス力」からプライシングをおこなうという考え方です。この値付けを左右するのはデザイン性や機能性やブランド性といった差別性や付加価値、いわゆる「違い」ということになります。この「違い」があれば原価の10倍、20倍の値付けをしたとしても良いわけです。

 お客様やユーザーにとって「原価=商品価値、サービス価値」ではない、というのがポイントです。同じ原価がかかっている商品やサービスでも、お客様にとっての価値は異なります。ここを読み取って、一方には原価の1.5倍の値付けをおこない、もう一方には原価の3倍の値付けをするのです。そしてこの3倍の値付けをした商品が爆発的に売れれば、その会社の利益率を支える「ドル箱商品」ということになります。

 やってはいけないのが、本来お客様にとって高い商品価値やサービス価値があるはずなのにも関わらずに原価をベースにした価格を自動的に決めてしまうことです。3倍で売れるポテンシャルの商品に2倍の価格をつけてしまう。当然バカ売れする可能性もありますが、お客様に「価格なりの商品力」と思わせてしまうのも事実です。もしかしたら一番やってはいけないことかもしれません。

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