著者:石田 麻琴

企業の入社試験課題をプロなりに回答してみる。その3【no.1720】

 企業の入社試験課題をプロなりに回答してみる。その3。(2019年4月のコラムです)

 『A社(自社のこと)のEコマースの売上を予測し、2年後に売上を3倍にするためにはどうすればいいかを考えて提案してください』を回答してみる、の3回目。

*Eコマースは商品だけではなく「ショップの比較も容易」

 前回のコラムで書いたとおり、ECは特定の価格帯に受注が集中しやすい。それはECというビジネスの特徴が影響している。たとえば皆さんがスーパーで買い物をするときのように、「これもあれもこのお店で買ってしまおう」というのが、ECにはあまりない。自分自身の利用を考えるとわかりやすいのだが、「これはこのショップで、あれはあのショップで」というような購買行動をとっているのではないだろうか。

 ECの特徴は「商品の比較が容易」だけではなく「ショップの比較も容易」なところ。なので、お客様が「この店はこれ」と思っている商品に受注が集中しやすいのだ。ECというビジネスにおいて「売れ筋商品=導線商品」になりやすいのもそのため。お客様は「その商品を買う」ためにECサイトにやってくるわけだ。

*1回の平均購入数が少ないのもそのため

 お客様が1度の買い物で購入する購入点数が少なくなるのも同様の理由である。スーパーのように15点~20点を買い物カゴに追加してレジに向かうということはない。リアルの実店舗であることが、ネットの世界では全くあり得ないことなのだ。ECではほとんどのお客様が1点~3点でレジに並んでいるような状態になる。

 もしもこれが実店舗と同じように物理的な「レジ待ち」があったらかなりキツイ。むちゃくちゃレジの前に人が並ぶだろう。逆に、スーパーで15点~20点を買い物カゴに入れ、レジに並び、前の方が15点~20点のレジ打ちと支払いをするのを待ち、自分もレジを打ってもらう・・。これがデジタルで瞬時に決済が済んでしまったらめちゃくちゃ楽である。この世界が「Amazon GO」ということですね。

*最後に「1.3」を掛ける意味

 「売れ筋商品の価格帯×1回の平均購入数」を掛ければ客単価を想定することができる。しかし、ここでは公式で最後に「1.3」を掛けることになっている。これはかなりの経験則が混じるのだが、「1.3」は「2.0」にはあまりならない、と思う。

 ECの客単価は売れ筋商品の価格帯に引っ張られやすいことはここまで書いてきた。売れ筋商品が1万円であれば、1万円に1回の平均購入数を掛けたものが客単価に近くなる。ただ、すべてのお客様が売れ筋商品を購入するわけではない。中にはヘビーユーザーの方やロイヤルカスタマーの方がいる。お得意様はときに3万円や5万円の高額帯商品も購入していく。これが「1.3」の意味になる。受注数は売れ筋ラインよりも圧倒的に少なくなるので、この数字は「2.0」にはならない。

*実際にこの方法でA社のEコマース売上を計算すると

 実際にここまで紹介してきた方法でA社のEコマースの売上を計算してみた・・。なんと年商で1兆円という予測になってしまった。「客単価」はともかくとして「受注件数」の計算が異常値になるのだ。おそらく受注番号がA社のカート以外でも振られているためだと思うのだが、間髪おかずに連続で購入しても通し番号がけっこう進んでいる。さすがにこのペースで売れることはないだろう。受注件数の秘策が通用しないとなると、どうするか・・

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