市場環境の変化。「ピンチをチャンス」に変える考え方。(2018年10月のコラムです)
「ピンチはチャンス」という言葉があります。
ピンチの中にはチャンスが潜んでいるという意味なのか。それともピンチをチャンスだと捉えるポジティブな思考性が大事という意味なのか。両方ともあるのでしょう。いまの中小企業のECの市場環境を考えると「ピンチ」なのは間違いないと思います。
*「あなたの会社だけ」に起こっていることはひとつもない
モールのルール変更、配送業者の値上げ、Amazonの台頭、広告の費用対効果の悪化など。この数か月のEC業界に様々な変化が起きています。中小企業でEC事業者だけではなく、大企業にも影響が出るような市場環境の変化です。「このままネットを続けても」と思っている経営者の方もいるのではないでしょうか。
ただ、いずれの変化も「あなたの会社だけ」に起こっていることではありません。モールのルール変更も配送業者の値上げもAmazonの台頭も広告の費用対効果の悪化も。その影響に多少の大小はあるにせよ「どの会社にも」起こっている市場環境の変化です。
*中小企業にとって需要は無限大のようなもの
市場環境の変化で「ECを辞めようかな」と思う事業者が出かねません。特に年末から年度末にかけて、辞めてしまう事業者が出てくる可能性があります。厳密にいえば「辞める」より「放置する」の方が表現として正しいかもしれません。力を入れないことにする、予算を割かないようにする、改善を加えないようにする。いずれにせよ「ネット経由での売上増は期待しない」という経営判断です。
EC事業者の99.999%はトヨタ自動車のような大企業ではありません。中小企業は需要の減を気にしても仕方がありません。極論を言えば、中小企業にとって需要は無限大のようなものです。競合他社の需要を取ってこれるならば、いくらでも需要は存在します。「ネットを辞める」事業者が出るのは、需要と供給のバランスを考えれば好都合です。
*市場環境の変化が起こると「お客様」が動き出す
ピンチは「あなたの会社だけ」に起こっていることではありません。先に書いたとおり「どの会社にも」起こっている市場環境の変化です。「ネットを辞めた」事業者が出ると、お客様は他のオンラインショップを探し出します。配送料金の値上げをオンラインショップの送料に反映させる。そうすると「他に安いところないかしら」とお客様が同じように探しだします。
ピンチが起こったとき、「動き出す」のは事業者側だけではありません。お客様の側にとっても「他のオンラインショップ」に目を向ける機会になります。だから「ピンチはチャンス」になりえるのです。人間はルーチンが大好きです。普段のルーチンをわざわざ変えることはありません。でも変化を感じたら、「他はどうなのだろう」とルーチンを壊して動き出します。今回のピンチは、新しいお客様に自社を知ってもらうためのチャンスだと言えるのです。
*辞めるなら「いま」、加速させるのも「いま」
市場環境が悪化し、ピンチだからとただ頭を抱えて、手を入れるのを辞めてしまうか。それとも市場と競合の動きをチェックし、積極的に改善を加えていくのか。辞めるなら「いま」、加速させるのも「いま」なのかもしれません。もっとも中小企業にとっての「ネットを辞める」という選択。それは、「自分の代で事業を終わらせる」に等しいことかもしれませんが。
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