著者:石田 麻琴

余計な先を見ない。「いま」に集中して生きる【no.1648】

 余計な先を見ない。「いま」に集中して生きる。

 少し前に引退されましたがボクシングの元世界チャンピオンの山中慎介さんの言葉で「先を見ない」というものがあります。

大切なのは「一日一日を積み重ねられるか」だけなのかも

 次の試合に勝ったらビックマッチができるかもしれない。連続防衛記録がどこまで伸ばせるだろうか。あと何戦かしたらアメリカで試合がしたい。どうしても先のことを考えてしまいがちなんだけれども、まず目の前の試合に集中する。一戦一戦が勝負なので、頭の中をそれだけに集中させていく。

 おそらくこの言葉の真意の部分は「一戦一戦が勝負」というところではありません。試合に至るまで「一日一日」に集中することが大切だと伝えているような気がします。毎日目の前の「やるべきこと」に集中する、そして「一日一日の自分」から逃げない。これを積み重ねた上で試合があり、世界チャンピオンになり、連続防衛記録があると。

 そう考えると「先を見ない」というのはメチャクチャ奥が深いように感じます。なおかつ徹底し続けることが非常に難しいことなのだなと思います。普通の人間だったら、過程の途中があいまいになり、そして結果もあいまいになる。何のかの理由をつけて自分を整理して次の新しい目標に向かっていってしまう。チャンピオンになれるかは「一日一日を積み重ねられるか」だけなのかもしれません。

 「先を見ない」という言葉を聞いて、もうひとつ思い出したことがありました。

「悩むべきときに悩めばいい」「いままでもそう考えながら進んできた」

 何年か前ですが、私の奥さんの職場にどうしてもソリが合わない人がいたようですね。まあ客観的にみればお互いにそれなりに問題があるわけです。たぶん何かのきっかけで解消するようなことだったりもします。そこは人間関係です。考えるほど深みにはまってしまって、その人に会うのが嫌になってしまいます。

 「今日はこういうことがあって困った。嫌な思いをした」とよく聞いていました。日曜日の夜になると「明日また会うのかー、おっくうだなぁ」というわけです。

 私は偉そうに説けるような人間でもないです。でも同じようなことは誰しもあるし、当然私もよく経験しています。上手くいかないことやイメージがつかないことがあると突然不安感が襲ってきます。その不安感や嫌悪感みたいなものは避けられません。ただ一歩引いた自分を持ち、「悩むべきときに悩めばいい」「いままでもそう考えながら進んできた」のふたことを言ってあげると、かなり気持ちは変わります。

人生でいままで何度も同じ経験をしているはず

 不安感や嫌悪感を解消するために具体的な何かがあるなら話は別です。ただいくら悩んでも解決しないことは楽しくない時間をつくるだけです。たとえば職場にソリが合わない人がいたら、職場に着く前の5分だけ悩めばいいのです。週末の楽しい時間までをも冒してしまうのは非常にもったいないことだと思うんですね。

 「悩むべきときに悩めばいいんだよ」と「いままでもそう考えながら進んできたよね」。なんだかんだ着実に進んでいけば時間が解決してくれることもあります。また、悩んでることのほとんどが杞憂だったりして何度も同じ経験をしているはずです。こういうことの整理ができるようになるってことが「大人」なのかもしれません。そして人生を楽しくいきるコツなのかも。

 「先を見ない」ってすごく大切。厳しい意味でも楽しい意味でも「いまを大切にし続けること」なんですね。

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