著者:石田 麻琴

弱者には弱者なりの戦略というものがある。ふたつのお話【no.1647】

 弱者には弱者なりの戦略というものがあって、だいたいは「汗を流す」もしくは「知恵を振り絞る。工夫する」ってことなんですけど、まあ両方ですね。ブランドがあって資本もあって認知もある大企業ってのはそれほど多くはないので、当然私も含めほとんどの会社は汗を流して工夫をするしかないわけですね。そしてただ「する」のではなく「し続ける」と。し続けないといい知恵は出てきませんから。

*マーケティング費用のないオリジン弁当の出店戦略

 これ本当の話か都市伝説的な話なのか確認をとっていないのでわからないのですが、弱者なりの戦略というところで面白い話なので「実際にあった(ぽい)話」としてよく話したりしています。オリジン弁当の皆さん、すいません。まあ私はネットショップ運営者時代の後輩から聞いたんですけどね。もし間違っていたら後輩のせいです。(すまん)

 いまでは有名なオリジン弁当なんですが、事業がスタートした当初はブランドもない認知もないお弁当屋さんだったんですね。もちろん資本もない。ご存知のとおり実店舗のビジネスというのは「立地」が売上を大きく左右するので調査・マーケティングの費用をかけたいところなんですが、予算がない。かといって「エイヤっ!」で出店をするのもギャンブルだし、会社が潰れてしまう。

 そこでオリジン弁当はどこに出店したかというと、コンビニのセブンイレブンの隣を狙って出店したというんですね。まあ実際はま隣が空いていることも稀だと思うので、できるだけ近くってことなんでしょうけども。もちろん先に書いたとおりこれ本当の話かわからないんですけどね。

 セブンイレブンだったら人の流れや地域の客層をきちんとマーケティングして出店しているハズ、また取り扱っている商品も顧客層に合わせたものになっているハズという部分をオリジン弁当は借りたわけですね。セブンイレブンにお弁当を探しにくるお客様は「ぜひウチのお弁当もみてみてください」と。まさに弱者の戦略です。

*TSUTAYAのFCを断られた会社がやったこと

 これも誰からか聞いた(これは後輩ではなくたしか先輩)話なので本当のことかはわかりません。TSUTAYAのCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の方に聞いてもわからないような小さな出来事だったかもしれません。ただ、これも興味深い話。

 とある街のレンタルCD・ビデオ店。いまではTSUTAYAとGEOばかりなのですが、昔は個人でやってるようなレンタルCD・ビデオ店がいっぱいありました。そんなとある街のレンタルCD・ビデオ店がTSUTAYAのFCに入ることを断られたらしいんですね。店舗は数店舗あったみたいなんですがなぜか。理由はわかりません。

 そこで怒った店主はどうしたか。店舗数をある一定の地域だけに絞って、その特定の範囲だけで徹底的にお客様の囲い込み戦略をおこなったんですね。販促、キャンペーン、クーポン、いろいろやったんだと思います。その結果、そのある狭い地域だけでは圧倒的なナンバーワンを取ることができた。それに困ったのがはるかに規模の大きい競合のTSUTAYAです。なぜ困るか。「全国展開」とうたえなくなるから、だったらしいんですね。

 「全国展開」をうたっているのでこの狭い地域でもどうにかしないといけません。結果、TSUTAYAがこのレンタルCD・ビデオ店を買収することになり店主はめちゃくちゃ儲かったという話なんですが、これも本当のことなのかはわかりません。ただ「全国展開をうたう会社の(結果的に)地域一番の対抗馬になることで、買収策を引き出した」弱者の戦略ってなんだかすごくないですか。

 こういう弱者の知恵とか工夫とかってのは、後から話を聞くと「あーなるほどね」って感じでも、「する」のではなくて「し続け」ないと浮かんでこないことなんですよね。