著者:石田 麻琴

セブン-イレブンの「ちょい生」は地域コミュニティをつくる?【no.1646】

 自宅の最寄駅のロータリーに煙草コーナーがある。夕方になると帰宅する社会人の皆さんが電車に乗る前の一服という感じで煙草や加熱式タバコを吸っているのだが、18時くらいだろうか。立ち話をする女性の5人組をよく見かける。

 5人のうち何人かが加熱式タバコを吸いコンビニか自販機で買った飲み物を飲んでいるのだが、2人か3人だろうか、水筒だかタンブラーだかを包む袋に飲み物を入れて口に運んでいる。まあ、マナー的にラベルを見えないようにしてアルコールを飲んでいるわけだ。缶ビールなのかチューハイなのかは計り知れないが、同僚の仲間と煙草を吸って酒を飲んでその日の仕事の発散をしてから帰りたいという気持ちは良くわかる。

 ちょっと飲んで、ちょっと話して、でも「お財布にも明日にも家族にも」迷惑をかけない範囲で発散して帰りたい。こういうニーズはたぶん今の日本に多く存在する。

*セブン-イレブンが試験的に始める「ちょい生」

 まさに今日、7月17日よりセブン-イレブンが一部の店舗にビールサーバーを導入する。Sサイズが100円、Mサイズが190円。とりあえずの試験導入ということになるようだが、どこまでこういったニーズに応えることができるのか。

 もう4年前になるがECMJコラムで「サイゼリヤに最近行きましたか?なんだかすごいですよ。」という文章を書いた。まだ読まれていない方は「no.0402」で検索してもらうと嬉しいのだが、これは過去のもっとも閲覧されたコラムになる。ECMJは知らなくても「サイゼリヤのコラム」を読んだことがある方は多いかもしれない。Twitterを始めSNSで相当バズった。

 内容としては「サイゼリヤがちょっとした飲み屋化している」というものだ。知人に「最近サイゼリヤ行った?」と聞かれ行ってみると、サイゼリヤで友達と飲んだり、ひとり漫画を読みながらワインを読んでいたり、夫婦でお酒を楽しんだり、老若男女が「お酒を楽しむ場」として活用している風景があった。みたいな感じ。(詳しくは読んでみて)

 とある著名なジャーナリストの方がこのコラムを読んで「サイゼリヤがバル化しているんだね」と書いていたのだけれど、ちょっと違うかなと思った。バルは「地域コミュニティの場」の位置づけもあって、サイゼリヤにはお客さん同士の交流とかはないから。

*コンビニが地域コミュニティになる可能性

 バル化がありえるとしたら、このセブン-イレブンの「ちょい生」の方が可能性はあるのかもしれない。日本の中でコンビニというのは圧倒的な文化で、世相や世の中の流れはコンビニが作っているといっても過言ではない。そのトップランナーであるセブン-イレブンの「ビールサーバー」導入はアルコール文化にどう影響するか。日本人の性格上からあまり利用されない(店先で飲みたくない)という可能性もあるんだけれども。「家族」と「仕事」以外の「サードプレイス」って日本人が潜在的に求めているものでもあるじゃないですか。

 もともと我々がいわゆる「街の居酒屋」で飲んでいたのが、白木屋とか和民のようなカジュアルな飲み屋になり、金の蔵や鳥貴族のようなお安め居酒屋になり、サイゼリヤや日高屋のようなところで飲むようになって、ついにコンビニの前で飲むようになるのかもしれない、というところまできた。アルコール文化のデフレ化がついにここまできてしまった、という捉え方もあるのかもしれない。

 まあ先に書いたとおり、ちょっと飲んで、ちょっと話して、でもお財布にも明日にも家族にも迷惑をかけない範囲で発散して帰りたい、みたいなニーズってあるよなぁと思う。わざわざ店に入って数時間かけてある程度飲んで食べて、早く帰りたい人とまだ帰りたくない人がいて、全然飲まないから毎回割り勘負けしてるみたいなのって往々にしてあるし、場合によっては面倒じゃないですか。

 セブン-イレブンの「ちょい生」にアルコール文化の変革と市場環境の変化と日本経済のデフレ化を考える今日このごろなんですが、皆さんはどう思います?いろいろな意味を持つ「一手」だと思うんだけれども。