著者:石田 麻琴

戦略が「組織」を決めるのではなく、戦略は「組織」で決まる【no.1528】

 戦略が「組織」を決めるのではなく、戦略は「組織」で決まる。

 戦略は「組織」で決まるのではないかと思った。「組織」で決まるということは、「人財」で決まるということかもしれない。特に中小企業だとなおさらそうなのではないか、と思う。

*理想をいえば「戦略に組織を合わせる」なのだが

 本来だと戦略というものは「組織」から離れたところにあるものだとは思う。「組織」から戦略を決めるのは間違った考え方。たとえば、まず自社のECを「こういう風にしたい」「こんなコンセプトでいきたい」という戦略を立てる。そして、そこに合わせて「組織」を構築していくのが正しい方法だといわれている。

 たとえば「雑誌のように『読み深めてもらう』ECにしたい」という構想があるとする。その場合、文章を書くことを得意としているメンバーが必要になる。もしかしたら、雑誌の編集の経験があるメンバーが必要になるかもしれない。戦略に合わせた人を新しくアサインできないのならば、現状のメンバーに「あなたは今日から執筆者です」と学んでもらわなければいけない。

 構想に合わせて人を採用するか、構想に合わせて人を育てるか、どちらかになる。だからやっぱり本来であれば戦略が「組織」を決めていくのがセオリーではあると思う。

*現実的には「できること」から進めるしかない

 ただ現実的には、戦略から「組織」を決める決断ができる経営者は少ない。なぜならこれは、ギャンブルとも言える。自分が長く商売をしてきた得意なステージならともかく、インターネットのようなまったく違う畑、まったく違う概念、まったく違うスピードの市場に戦略を設定し「組織」を決めるようなことは相当な度胸がいる。

 もちろん経営者だけではない。EC運用を実際に担当する社員・スタッフ・メンバーも、バシッとした戦略や構想やコンセプトを提示されただけで、「じゃあ私は明日から文章の執筆者として頑張ろう」「じゃあ私は明日からWEBサイトの編集者として頑張ろう」「じゃあ私は明日からフォトショップとイラストレーターの勉強をしなくては」にはならないだろう。

 普通であれば「本当に大丈夫なんですか?」だと思う。意識やモチベーションの問題はなく、ごくごく一般的な反応ではないだろうか。戦略から「組織」を決めるのは理想的ではあるが、現実問題はあくまで理想で終わる。

*「組織」で戦略を決める、から始めていく

 これまで何かしらの母体となるビジネスを続けてきていて、インターネットに新しい販路の柱をつくろうとチャレンジする事業者が陥りやすいところかもしれない。どうしても「理想」からインターネットに入っていってしまう。WEBサイトの制作外注などは、「理想」の塊ではないだろうか。

 だが、ご存知のとおりスタートしたECサイトの90%以上は成果につながらない。インターネットのマーケティングのポイントはスタートではなく、「運用」にある。どうつくるかよりも、どう変えていくかの方が大事だ。「組織」が「いま何ができるか」をしっかり見定めないと、プロジェクト自体が出しっぱなしになってしまう。

 まずは、戦略から「組織」を決めていくのではなく、「組織」で戦略を決める。まずは「組織」の「できること」を着実に積み重ねていくことから始める。業務のルーチンをつくるためにも、戦略を「組織」に合わせることが成功の秘訣なのかもしれない。たとえそれが戦略論のセオリーからは間違っていたとしても。

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