著者:石田 麻琴

ネットショップの「尖り」を自分たちの中から探し出す【no.1503】

 ネットショップの「尖り」は、自分たちで作るものではなく、自分たちの中から探し出すものなのかもしれない。

みんな「こだわり」もってネットショップを始める

 幾度となくECMJコラムで書いているとおり、そしてEコマースの市場に足を踏み入れるとほどなく知るとおり、インターネットの世界はどこまでも広く、どこまでも深い。商圏が限られている世界ではないから、どこにお客さんがいるのかわからないし、お客さんとの距離がどれくらい離れているかもわからないものなのだ。

 Eコマースをスタートする理由は人それぞれ、会社によってそれぞれだと思う。始める具体的なきっかけは人によって会社によって違えども、ほとんどの事業主が持っていることがある。ネットショップへの「こだわり」や「理念」や「想い」である。「自分はこういうネットショップにしたい!」「ネットショップを使って、この商品を全国のお客様に伝えたい!」この気持ちもひとつの「こだわり」なのだ。

 「こだわり」を持つことはけっして悪いことではない。「こだわり」や「理念」や「想い」が人を動かすのは事実だし、同じようなものを同じような価格で、そして同じような提案方法で売らなければいけないとしたら、最後に「尖り」になるのは事業主自身になる。そう、会社自体の特徴やネットショップ担当者個人の特徴自体が「尖り」になる。だから、「こだわり」や「理念」や「想い」は重要なのだ。

できるなら浅いところで「ラク」して売上をあげる

 ただ、もう少しスマートにネットショップに「尖り」を持たせることはできないだろうか。深いところで「こだわり」や「理念」や「想い」がネットショップの「尖り」になるとしても、できるところならもっと浅いところで勝負をしたいところである。

 商売をなめているわけではない。商売を軽んじているわけではない。ただ、同じようなものを同じような価格で、そして同じような提案方法で売り、最終的な「尖り」を「こだわり」や「理念」や「想い」に求めるよりも。シンプルに「同じようなもの」を売らない方が、「ラク」をして売上をあげられることになるのだ。

 長年、同じ商売を続けていると、この「そもそももっとスタートに勝負ができるのではないか?」という部分が抜け落ちてします。「こだわり」や「理念」や「想い」があまりにも固まりすぎて柔軟さを失ってしまう。勝負のステージを市場によって変化させ、スマートに「ラク」して売上をあげることが「悪」のように感じるようになってしまう。「こだわり」や「理念」や「想い」はけっして良い部分だけではないのだ。

自分たちの中から探し出す「尖り」は客観的なもの

 ネットショップの「尖り」は、自分たちで作るものではなく、自分たちの中から探し出すものだともいえる。そして、市場の変化に合わせて「自分たちの中」から探し続けていくことが大切なのではないだろうか。

 自分たちがネットショップを「あーしたい」「こうしたい」というのはわかる。これは「尖り」の表の部分。もうひとつ「お客さんに指示されていること」これを見逃してはいけない。ここに注意を払わなくてはいけない。「どこで、どうやってお客さんはうちのネットショップのことを知ったのか」「数ある競合ネットショップの中で、なぜうちのネットショップを選んでくれたのか」その理由に注意を払いたいのだ。

 「お客さんが知った理由」「お客さんが選んだ理由」にこそ、もしかしたら自分が気づいていなかったり、気づいていても軽視していたりしている、自分たちの中にある「尖り」の可能性が高い。自分たちで作る「尖り」は主観的なものだ。自分たちの中から探し出す「尖り」は客観的なものだ。自分たちの中に「軸」を持ちつつも、市場に合わせてスマートに「尖り」を変化させる方がもしかしたら時代に合っているのかもしれない。

 おわり。