著者:石田 麻琴

人は忘れる生き物。情報を「得て失って」を何度も繰り返さないために【no.1502】

 人は忘れてしまう。本当に忘れてしまう。自分ではわかってるつもりでも自然に忘れていってしまい、思いだせない。というか、そもそも頭の中に浮かんでいたこと自体も忘れてしまう。だから、最初からなかったものになってしまう。

一度頭の中に入ったことを「忘れてしまった」だけ

 どうすればいいのかわからないとか、アイデアが浮かばないとか、まだまだ勉強不足ですみたいなのはだいたいが嘘だと思う。いや、そういう場合もあると思うんだけども、一度は頭の中に浮かんだことや入ったことを「忘れてしまった」というのが本当のところではないだろうか。

 テレビをみていると極端に記憶力がいい人がいるが、極端に記憶力が悪いという人はそんなにいないと思う。たとえ記憶力が他の人に比べて先天的に劣っていたとしても誤差のレベルだろう。みんな同じように24時間を生きていて、その中で起きて動いている間はたくさんの情報に触れている。

 その情報の1%でも多く頭の中に残すことができたならば、きっと人生は変わる。昨日の夕飯は何を食べたか覚えているか。一昨日のお昼は何を食べたのか。じゃあ先週の金曜日はどうだ。去年の今日は何を食べたか。ほとんど覚えていないはずだ。記憶なんてものは適当なのである。だから普段生きている中で触れている情報を1%でも多く残すことができたら、人生は大きく変わる。

「頭の中に情報を残す」ということを極力やめる

 というか、情報は頭の中にはたいてい残らない。一昨日のお昼ごはんや先週の金曜日の夕飯や去年の今日の食事を覚えていないのだから、そもそも「自分の頭」を信用しきらない方がいい。1%を変えるためには「頭の中に情報を残す」ということを極力やめた方がよいのだ・・と私は気づいた。

 記憶というものは不都合なことにたまに戻ってきたりする。「あーあれなんだっけなぁー!?」と思いだすことができなくても、ウンウンうなっている間に思いだすことができたり、ふとした瞬間に頭の奥底から記憶の前面に戻ってきたりする。だから僕らはまた自分の頭の中を信用してしまうのだけれども、戻ってこない記憶は戻ってこないし、記憶の中にあったこと自体が記憶にない記憶もたくさんあることだろう。特に年を取っていくと。

 忘れてしまいそうなことは紙に落とす。紙でもエクセルでもワードでも良いし、エバーノートでもスマホのメモ帳でも良い。忘れてしまいそうにないことでも、どうせその時に「これは忘れないだろう」と思い込んでしまっているだけだ。絶対に紙やデータに落としておいた方がいい。直感やヒラメキほど、花火のように一瞬のインパクトを残して頭の中から消えていってしまう。本当はそれが重要な情報だったりするのに。

情報を「忘れない」工夫をする

 ネットショップの話である。「実行数値管理表」はまさに、ネットショップに「やったこと」「あったこと」「起こったこと」を残すためのツールである。

 二週間前の今日、ネットショップにどんな改善を施しただろうか。もしかしたら日報や業務報告書に残っているかもしれない。では「なぜその改善を施そうと考えたか」また「施した改善による狙いはなにか」は後日思いだすことができるだろうか。そしてネットショップに「あったこと」「起こったこと」は二週間後に調べることができるか、できないのである。だから、毎日書き残しておく。それ以上でも以下でもない。

 人は忘れてしまう。忘れてはいけないことも忘れてしまうし、忘れたくないことも忘れてしまう。直感やヒラメキや情報を活かせるのはけっして「人より優秀な人間」ではないと思う。日々生きている中で生まれる好奇心と、そこからの情報を「忘れない」工夫をしている人ではないだろうか。「忘れない」とは自分の頭の中だけに情報を残さないことだ。そこに頭が良い悪いは関係ない。

 おわり。