「麻間(あさま)さんがいうところの『訴求力』ってやつね」友花里さんがいいました。
「でもさ、それって大変じゃない。いままでどの広告文が良いのか。それをアイデアを出して頑張って試してたのに、実はそれだけじゃ広告からの注文は十分にもらえないってことでしょ。どの広告文がいいのかに合わせて、どんなページに飛ばすのがいいのかを考えなきゃいけないと。それって広告戦略を進めるときに考えなきゃいけないことが何倍にもなるってことでしょう」七海さんはあきれたようにいいました。
「まあ、麻間さんの教えをそのままやろうと思ったらそういうことね。わさび漬け笹かまの広告をかけるにあたって、まずは検索キーワードを検討しなきゃいけない。そしてそのキーワードに対する広告文を検討しなきゃいけない。さらにその広告文に対してのリンク先のページを検討しなきゃいけない・・ってことね」友花里さんがいいます。
「それって、もし仮にそれぞれのアイデアが5つずつあるとしたら『5×5×5』で75通りの広告を検証して一番成果があるものを探さなきゃいけないってことでしょう。これは時間がかかるわ」七海さんはさらにテンションが落ちたようでした。
「ってか七海。75通りじゃなくて、『5×5×5』は125通りね。確かにたくさんアイデアを出して成果の検証をしなきゃいけないけれども、これだけ大変なことだからこそ、きちんとやった時に意味があるんじゃないかなぁって思うの。だって、私たちだけでリスティング広告を使ってたらキーワードをいくつか試して、広告文もひと通りで、リンク先も笹かまオニギリのトップページに飛ばして、それで『リスティング広告は全然売れないねー』なんて言ってたと思うのよ。他のネットショップやってる会社さんも、ここまで理論立ててやっているところは少ないと思うな」友花里さんが前向きな意見を出します。
「いやー友花里の考え方はまともっていうか、ポジティブで尊敬するわ。私には大変だなぁぁぁって不安しかないけれども・・」七海さんは苦笑いをしました。
「私だって大変だなぁぁぁって思ってるよ。だって125通りどころじゃなくパターンがあるわけじゃない。ちょっとだけ言葉のニュアンスを変えるとか、句読点の位置を変えるとか、リンク先のページの文字のフォントを変えたり文字のカラーを変えるとかさ。途方もない改善活動だと思うのよ。ただ、ネットショップって『わかる』から面白くない?」友花里さんが七海さんの方を見ます。
「『わかる』って何が?」七海さんが聞き返しました。
「自分が仮説を立ててネットショップとか広告におこなった改善が『良かったのか、悪かったのか』が。麻間さんがいつも言っていることだけど、自分がやったことが『良かったのか、悪かったのか』がデータってカタチでわかるからこそ、改善活動を続けていく勇気がわくと思うの。だってさ、笹かまオニギリの実店舗なんて、アクセス人数もページビュー数もクリック数もわからないんだよ」友花里さんが力強く言いました。
「たしかに・・。これを実店舗でやろうと思ったら大変だよね。本当に暗中模索っていうか・・」七海さんが言います。
「そう。ネットショップの改善って一見すると暗中模索なんだけど、実はただ模索しなきゃいけないわけじゃないんだよね。さ。ってことで、麻間さんからの宿題の広告文に対するとび先のページを考えましょ」友花里さんは右手でポンと膝を打って立ち上がり、ホワイトボードマーカーを手に取りました。