「だからといって七海さんの広告文の方がいいかというと、そうとも言えないんですよ」
麻間(あさま)さんが意味深な発言をしました。七海さんと友花里さんはほぼ同時に「えっ!?」と麻間さんの方を見ました。
「えっ。だって、私の広告文の方がお客様から12件も注文をいただけてるし、コンバージョン率も2.0%なんだから、友花里の五番目の広告よりも全然いいんじゃないんですか?」七海さんが突っ込みます。
「ただ、友花里さんの広告は同じ表示回数ながら650クリックもされています。ここがポイントなんです。今回の広告文に限っていえば、一番注文が取れたのが七海さんの広告文、一番クリックを取れたのが友花里さんの広告文になりますが、ここでリスティング広告の改善は終了じゃないんですね。むしろ、ここから始まるといっていいでしょう」麻間さんの言葉に、七海さんは「どういうことですか?」と質問をします。
「次への改善策としてこれらの結果からどういう仮説を立て、どう具体策を考えるか。それが大事ということですね」麻間さんが答えます。続けて、「友花里さん、何か思い当たる改善策はありますか?」と質問を友花里さんに振りました。
「私思ったんですけど、今回は5つの広告文をランダムに表示させたので各々の表示回数が5分の1になっちゃってるわけじゃないですか。もし4つの広告をやめて、七海が考えた四番目の広告案だけを表示させ続けたらたくさん注文が取れるんじゃないかと思いました。単純に表示回数が5倍になるとすると、12件かける5で60件の注文がくることになりますね」友花里さんが答えます。
「なるほど!そうか。そう考えればいいのか!」七海さんがいいました。
「ひとつの改善策として、それはありますね。今回のデータでもっとも売上に繋がっているアイデアを全面的に採用すれば、現時点での最適化を図れる可能性があります。ただ、できれば今はまだ、その方法は取りたくないかなぁ」麻間さんが渋い顔をしていいました。その顔をみて、友花里さんも渋い顔をします。
「では、他の考え方をひとつ。今回一番クリックが取れたのは友花里さんが考えてくれた五番目の案です。『全国の焼酎マニアさんお待たせしました!新おつまみのご提案。』こちらの広告文が650クリック取れています。ただ転換率としては0.6%で一番小さい数字になっています。もし、このコンバージョン率が0.6%から2.0%、3.0%になったとしたら良くないですか?」麻間さんがいいます。
「そりゃ、コンバージョンが上がったらいいですけど、そんなことは可能なんですか?単純に広告文を一番取れているものに絞った方がいいような」七海さんが疑問を持ったようにいいました。
「まあ、練習だと思って考えてみてくださいよ。これが今回の宿題です。ヒントはリスティング広告をスタートしたときにいったこと、覚えていますか?広告から注文に繋がるお客様の流れの話です。『キーワード検索→広告表示→広告クリック→ECサイト→購入』という話ですよね。ここに改善のヒントが隠れています。おふたりで話し合って、友花里さんの広告文『全国の焼酎マニアさんお待たせしました!新おつまみのご提案。』これがもっとも転換するように改善策を考えてみてください」
「いやいや困ったね」麻間さんが帰った後のおにぎり水産会議室で七海さんがいいました。「うーん、でも私は麻間さんがいっていることの意味がわかった気がする」友花里さんは何かを掴んだようです。