(前回はこちら)
前回はEコマース戦略概論の大筋を紹介しました。今回から各回のテーマに沿って解説を進めていきます。全10回の2回目である今回は、<1.マーケティングの原理原則、市場環境の変化>です。
<1.マーケティングの原理原則、市場環境の変化>
*「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代に。
Eコマースの市場はすでに「買いたい人」よりも「売りたい人」が多い時代です。「売りたい人」よりも「買いたい人」が多い時代は7年以上前に通り過ぎています。ビジネスのルールが変わっているのです。
市場は「需要と供給」のバランスで動いています。私がEコマース業界に足を踏み入れた2005年は「売りたい人」よりも「買いたい人」が多い時代でした。需要と供給のバランスでいえば、「需要>供給」です。潮目が変わり始めたのは2009年から2010年にかけてでした。需要と供給のバランスが「需要=供給」から「需要<供給」に変化をしていったのです。
*市場環境の変化はもう元には戻らない。
現在の需要と供給のバランスは「需要<供給」です。「買いたい人」より「売りたい人」が多い時代の意図するところはここにあります。そして残念ながら、一度「需要<供給」に傾いた市場は、もう「需要>供給」の状態には戻りません。「需要=供給」にも戻りません。「需要<供給」の状態が続き、また新しいイノベーションが起こると新しい「需要>供給」が起こります。
中小企業のEコマース事業は「需要<供給」の市場の中で戦っていかなければいけません。「需要>供給」の時代、「需要=供給」の時代に発信されたノウハウ、成功事例、アプローチ手法は「需要<供給」の時代には一切通用しません。
*これからの時代を生き抜く、マーケティングの原理原則。
「需要>供給」の時代のマーケティングは比較的わかりやすいといえます。需要が一気に拡大をするわけですから、「深み」よりも「広さ」を求めるマーケティングが成功の近道です。簡単にいえば広告戦略です。広告宣伝によって広がり続ける需要の面を押させていくことが勝負のカギになります。
「需要<供給」の時代のマーケティングは「深み」をつくるマーケティングです。お客様をしぼり、改善を重ねながら小さくとも絶対的なポジションをつくっていくマーケティングです。ここがこれからの時代を生き抜く、マーケティングの原理原則になります。「絞る」と「カイゼン」です。
*「違い」をつくる。「データをとって、毎日カイゼン」する。
インターネットの世界は半永久的に競合のWEBサイトが増え続ける世界です。ご存知のとおり、ネットの世界には「商圏」という概念がありません。日本だけではなく世界中のWEBサイトが競合サイトになりえます。その中でどういった「違い」をつくっていけばいいか。マスよりも、ニッチを狙う戦略が中小企業のEコマースには合っています。
もうひとつは「データをとって、毎日カイゼン」です。デジタルの特徴は、大企業も中小企業も零細企業も個人事業主でも小学生でも、「データ」を活用することができる点です。この「データ活用」がEコマース戦略を成功させるためのポイントになります。市場環境が変わっても「データをとって、毎日カイゼン」の原則は変わりません。むしろ市場環境が厳しくなればなるほど、「データをとって、毎日カイゼン」は重要になります。
―――では次回の3回目は、<2.実行数値管理表の活用>について解説をしていきます。