仕事の先輩にいわれてハッとしたことがあった。「売上の作り方はどうでもいい。売上を作ることが大切だ」というのだ。
もちろん、売上を作るためなら犯罪をしても良いとか、法律を冒しても良いとか、そうった意味ではない。自分の特徴や個性や努力で勝ち取った売上ならば「どんな売上でも」恥じる必要はない、という意味に私は捉えた。
ネットショップ運営は思ったよりも上手くいかない
人は少し、カッコよく数字を作ろうとする。
市場調査をおこなって戦略を立て、具体策をスケジュールに落とし込み、担当者と期限を設定する。ネットショップだったら、見た目の良いEコマースサイトを構築し、美しい写真でスマートにお客様からの注文を取ろうとする。当然、そこにはバッドエンドのイメージはない。途中何度か挫折を経験するとしても、それは華やかなゴールに至るための演出に過ぎない。想像するのは成功している自分の姿だ。
しかし現実はそうはならない。
Eコマース市場は事前のリサーチをおこなってもあまり意味がない。ネットショップの運営をやったことがなければ、スタート前の戦略は絵に描いた餅。スケジュールはスケジュール通りに進まず設定自体が形骸化する。担当者は期限おろか、仕事を持つのも嫌がる。外注で見た目の良いネットショップ、質の高い(と思われる)商品ページを作成しても、なぜか売れない。華やかなゴールに至るための挫折ではなく、終わりの見えない売上ゼロ行進が待ち受けている。
これを経験して初めて「カイゼン」することを知る。中小企業のEコマースで成長ラインに到達した会社は、一度はこの経験をしたことがあるのではないだろうか。
「カッコ悪い」と思ってやっていないことが鉱脈の可能性
たとえば、あまり仕事が上手くない営業がいたとする。会社の説明も商品の説明も上手ではない。とにかく頑張るのだけが取り柄。ただ、悪いなわけ人間ではない。真っすぐで不器用なタイプ。何度も何度も訪問をしてくれるから、お情けで商品を買ってあげたり、お情けで仕事を発注したりすることもある。カッコいい売上の作り方、カッコいい数字の作り方のイメージからはもっともかけ離れたパターンではないかと思う。
しかし、「売上の作り方はどうでもいい。売上を作ることが大切だ」という観点から考えたとき、この営業の数字の作り方に「カッコいいも、カッコ悪いも」あるのだろうか。
コネでしか仕事を取れない人がいる。知人からの紹介でしか商品を販売できない人がいる。自分のことを知らない人が「その商品が欲しいんですけど」と注文を依頼してくることは一切ない。ただ周りの人間の繋がりでビジネスを広げている。
一見すると前者の「知らない人が~」の方が数字の作り方としては美しい。しかし、このコネでしか仕事を獲得できない人の「コネ」が1人2人ではなく100人200人だったら果たしてどうだろうか。知人からの紹介でしか商品を販売できない人の「知人」が1人2人ではなく500人1000人だったら果たしてどうだろうか。実は前者よりも後者の方が、強烈に強いビジネスモデルだといえるのではないか。
「売上の作り方はどうでもいい。売上を作ることが大切だ」
世の中は「カッコよく」数字を作ろうとして、数字自体を作れていない人ばかりなのかもしれない。大切なのは「カッコいいか、カッコ悪いか」ではなく、数字をつくることなのだ。普段の仕事の中で、「『カッコ悪い』と思ってやっていないこと」はないだろうか。もしかしたらそれが数字をつくるための本当の鉱脈なのかもしれない。きっと人それぞれ自分なりの数字の作り方があるはずだ。