著者:石田 麻琴

競合の商品を購入する。さらなるお客様の「ニーズ」を探す。【no.1251】

 競合の商品を買ってみる、簡単なことなのだけれども意外とできていない(やっていない)ことなのではないかと思う。

 先日、とある顧問先に競合の商品を買ってもらった。ショッピングモールの検索でいつも上位に入っている商品だ。レビューもたくさん入っている、いわゆる「ずっと上位にいる」商品。

 顧問先のEコマースチームもこのカテゴリの商材のプロなので、ネットショップの画像をみるとある程度の商品レベルを予測することはできるのだが、実際にモノを手にして触って使ってみてみると商品レベルの理解がまったく違う。Eコマースチームのメンバー4人に私を含めた5人でポンポンと「気づき」の意見が飛ぶ。

 あくまで今回のケースにはなるが(そしてどの商材かはお伝えできないのだが)、思っていたよりも商品が小ぶりだった。ファッション系のアイテムなのだが、自社の商品と並べるとすらりと可愛らしく見える。逆に、並べてしまった自社の商品は少し寸胴にボテっとしているように見えた。まず並べたときのフォルムが違うのだ。

 また実際に商品を手に取って様々な角度から見たり、要所を手で触って確かめてみたりすると、競合商品の「作りの丁寧さ」がわかった。自社の商品よりも接着部分の加工がスッキリしているのだ。接着面を触ってみると自社の商品の方が競合の商品に比べて少しザラザラしているのがわかる。

 他にも競合の人気商品との違いは様々あった。また、配送・梱包に関しても競合ネットショップがどんな取り組みをおこなっているのか、わかることが面白い。今回の場合は、手書きの文章をコピーしたお店のレターがついていた。特徴的だったのが、納品書とこのレターを透明の袋に入れていたこと。透明の袋に入れておくことで、「お客様に気づいてもらう率」を上げるという工夫なのかもしれない。小さな改善をきちんとやっているのだ。

 商品を買ってみるとわかることが多くある。なるほど、これがいつも検索結果の上位にいる商品か。それを理解することで、自社が「ヒット商品」を企画するときに「どれくらいまで商品レベルを高めていかなければいけないのか」が見えるようになる。当然、同じ商品を同じ条件でつくったとしても先行して信頼も得ている商品に勝つのは難しいのだが、わかりやすい「基準」ができる。

 競合の商品を買ってみて自社の商品の比較をする、とともに、もうひとつやってみた方がいいことがある。商品レビューを見るのだ。

 人気の商品なので、良いレビューが多い。「かわいいのでリピートしています」とか「配送が早くて週末のお出かけに使えて良かった」などのレビューも多いと思うが、「こうだったらもっと良かった」というような内容のレビューがないかを探すのだ。人気商品でも少なからずお客様の不満は出る。なぜならお客様はもっともっと「満足」がしたいからだ。これを拾うのである。

 自社の企画する新商品には競合商品のフォルムの良さやつくりの丁寧さの他に、さらにデザイン性や機能性として付加できるもの、改善できるもの、違いを出せるものがないかを検討する。お客様が書きこんだレビューはその要素を考えるための大切な意見である。「競合の人気商品」と「競合の人気商品のレビュー」までも自社が確認できてしまうのだから、Eコマースは面白い。「怖い」というのが正しいかもしれない。

 競合の商品を購入して、その良さをチェックする。そして、レビューをチェックしてさらなるお客様の「ニーズ」を探す。やりきれているだろうか。

 おわり。