著者:石田 麻琴

笹かまオニギリのリスティング広告がスタートしました。【no.1204】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。

(前回はこちら

「そもそもこれって、たくさん広告をクリックしてもらった方がいいのかな?」

友花里さんがつぶやくように言いました。最初、七海さんは友花里さんの話していることの意図が読み取れませんでした。その様子を感じて、友花里さんが続けました。

「いや、なんでそう思ったかっていうと、広告ってお客様がクリックしてくれて、ネットショップにアクセスしてくれたとしても、お客様に商品を買ってもらえるかはまた別の問題じゃない。クリックされる回数が増えるのって、いいことなのか悪いことなのかわからなくて」

友花里さんが解説するようにいいました。七海さんは「なんでそんな心配をしてるのかがわからない」という様子でいいました。

「いや、でも、たくさんのお客様にアクセスしてもらえば、ネットショップのアクセス数は増えるじゃない。麻間(あさま)さんに教えてもらったように、ネットショップの売上の公式って『アクセス数×転換率×客単価=売上』なんだから、アクセス数が増えればそれが売上アップにつながっていくんじゃないの」

七海さんが友花里さんの心配を突き放すようにいいました。友花里さんは少し納得がいかない様子でしたが、「まあ、ひとまずやってみてデータを見てみようかぁ」とまたつぶやきました。

七海さんが教本を読んで作成したアカウントIDを使って、リスティング広告の管理画面にログインをします。キーワードの設定、広告の設定、リンク先の決定、入札単価など、いくつかの入力欄が出てきました。七海さんは友花里さんに確認をしながら、入力欄を埋めていきます。

「えっと、キーワードは『笹かまぼこ』でオッケーだよね。どんな広告を表示するかはこれから考えるとして、リンク先の決定か。リンク先は『笹かまオニギリ』のトップページのURLでいいよね。クリックあたりの入札単価は、できるだけたくさんクリックしてもらいたいから一番高い金額にしてみよう。150円と。後からも変更がきくみたいだから、ひとまずはこれでいいよね」

七海さんがカタカタとキーボードを打って入力を進めていきます。友花里さんは七海さんが入力している内容が「何か違うんじゃないかなぁ」と思っていましたが、かといって自分がリスティング広告のアイデアを出せるわけではないので、なんとなく同意をしていました。

広告として表示する文言は、ふたりで話し合った末、こんな文章になりました。

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宮城県の笹かまぼこ。笹かまオニギリネットショップ。
宮城県で笹かまぼこを生産しているおにぎり水産のネットショップ。美味しい笹かまぼこを全国にお届けします。
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「これで良しっと」。七海さんが広告の入稿ボタンをクリックしました。

キーワードの設定、広告の設定、リンク先の決定、入札単価を決め、リスティング広告がスタートします。リスティング広告は最初に広告費を入金しなければいけません。鬼切社長との相談により、現在の月商200万円の2%。4万円を広告のシステムに入金しました。検索エンジンで「笹かまぼこ」と検索すると、たしかに「笹かまオニギリ」の広告が掲載されます。

「これでどれだけ売れるか、楽しみだね」

七海さんは友花里さんの方を向いてニコリと笑いました。友花里さんも七海さんにニコリと笑い返しましたが、心の中にはわずかに引っかかっている不安がありました。その不安は無意識に友花里さんの口から出てしまいました。

「本当に、これで大丈夫かなぁ・・」

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