ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「ユニクロが海外に実店舗を出すことになりました。その国では初めての出店だったようです」
麻間(あさま)さんが話し出しました。麻間さんの話はこんな話だった―――。
ユニクロがアジアのとある国に出店をすることになった。その国では初めての出店だった。リーダーを任されたのはとあるエース社員。ただ、まったくといっていいほど現地の知識がない。なんとかして情報を集め、なんとかして出店する場所を決めた。
出店する場所が決まったら、内装と商品の陳列が始まる。しかし、日本でやるように上手くは進まない。工事に遅れが生じる。現地の人とのコミュニケーションも簡単にはいかない。どんな商品をどんな見せ方で陳列するか、在庫はどれくらい用意するか。また、アルバイトの採用と教育も進めなくてはいけない。
店舗に目途が立つか立たないかのうちに、現地のお客様への告知が始まる。オープニングのキャンペーン期間の目標を達成したい。たくさんの方に興味を持ってもらうためにはどうすればいいか、「いける。もうダメだ」の毎日の繰り返し。そしてなんとか、なんとか、オープンの日を迎えることができた。
「それで、どうなったんですか?結局、お客様は来られたんですか?」
友花里さんが前のめりになって、麻間さんに聞きます。
「来ました。たくさん来ました。予想を上回る人数のお客様がきて、その店の商品はあっという間に売れていきました」
「やったぁ!!」
それまで黙って聞いていた七海さんが、突然大きく声をあげました。
「まあまあ、七海さん、続きを聞いてください」
麻間さんがそういうと、七海さんは真剣な顔つきに戻りました。
「結局、キャンペーン期間の売上は、当初の売上目標をはるかに上回る数字になりました。そして、エース社員が開店後の売上の報告を柳井社長に報告しにいったんですね。当然、売上目標を大幅に超えたわけですから、意気揚々と報告をしたわけです。しかし、柳井社長の反応は、意外なものでした。この社員は、怒られたんですね。ここで」
七海さんと友花里さんは驚いた顔をしました。「えっ!何でですか?」と友花里さんがいいました。「ちょっと調子に乗っている雰囲気だったからとか?」。七海さんがいいました。「そんなんじゃ、ここで話す話にならないでしょ」。友花里さんが突っ込みを入れます。
「社員の報告後、柳井社長が何をいったのか。『じゃあ、なんで2店舗同時にオープンさせなかったんだ』っていわれたというんですね」
「何それ・・。どういうこと」。七海さんが困惑した様子です。「なんとなく、言いたいことがわかる気がしてきた・・」。友花里さんがいいました。麻間さんが続けます。
「ここで柳井社長が指摘したのは、つまり『販売予測の甘さ』ということなんですね。オープンしてたくさんのお客様がきてくれた、売上目標も達成した。でも逆にいえば、商品を買えなかったお客様や店舗に入れなかったお客様がたくさんいたわけです。『売れるものを最大限売る』の原則からすると、そこを指摘する理由もなんだかわかる気がしませんか?」
「すごい。そこまで徹底してるんだ・・」
友花里さんが感心をしていいました。「いやいや、なんとも贅沢な悩みだわ」。七海さんがお手上げといわんばかりに、両手を上にあげていいます。
「我々も『わさび漬け笹かまぼこ』を売れるだけ売らないといけませんね。まだまだ、商品を知らない人は日本中にごまんとおられます」
麻間さんがいいました。
つづきはこちら。