著者:石田 麻琴

HISの澤田社長がハウステンボスのスタッフにお願いしたこととは【no.0561】

 前週のブログ、「掃除を徹底すると売上が上がる」の続編のような話です。「こんなことに徹底することで業績が回復しているの!?」的な話はまだまだあります。

 先日、話を聞いて面白かったのが、HISの澤田社長の話です。澤田社長がハウステンボスの再生に取り組むときに、「ハウステンボスのスタッフにお願いしたこと」があるというのです。

*澤田社長が、ハウステンボスのスタッフに何を徹底させたか

 ハウステンボスを知らない方はいないでしょう。長崎県の佐世保市にあるオランダの街並みを再現したテーマパークです。1992年というバブル期の終盤に開業し、一時はジャネット・ジャクソンの野外ライブを開催するほど盛り上がりましたが、徐々に業績が悪化しはじめ2003年に会社更生法の適用を申請、野村系のVC(ベンチャーキャピタル)が入ったものの、にっちもさっちもいかなかったというテーマパークです。

 バブル期が終わり、地方のテーマパークは時代に合わないんじゃないか、長崎県の佐世保市のしかもオランダ風のテーマパークなんてそもそも誰もこないんじゃないか、誰がこんなコンセプトを考えたんだ。そんな前提条件を疑う声も上がる中で、「私がやりましょう!」と手を挙げたのが、HISの澤田社長です。2010年にHISの支援が始まってから、ハウステンボスの業績は激変し、黒字テーマパークに成長したことは良く知られていると思います。

 そんな澤田社長が、ハウステンボスのスタッフに何を徹底させたか、という話です。

*「今日から2倍の速さで歩いてくれ」とお願いをした

 一見すると、ハウステンボスの再生は、その企画力・営業力によって実現されたと思う方がいるかもしれません。いわゆる「戦略」です。確かに、「ONE PIECE」とのコラボ企画は当たりました、イルミネーションやプロジェクションマッピングも当たりました。そんな、「花」の部分にどうしても目がいきがちになりますが、重要なのは「幹」や「根っこ」の部分です。

 澤田社長がハウステンボスのスタッフに「今日から2倍の速さで歩いてくれ」と徹底させたというのです。

 澤田社長がスタッフに求めたことは簡単です。営業ならば、2倍の速さで歩いてお客様のところを回ってきてくれ。パーク内の掃除のおばちゃんならば、2倍の速さで掃除をしてくれ。社長である、澤田社長だった2倍の速さでパーク内を動き回ります。ハウステンボスの事業再生をテーマにしたテレビ番組で、澤田社長が自転車に乗って動き回っているのを見たことがある方も多いと思います。

「常に2倍のスピードで行動することを意識して仕事を進めてくれ。まずは2倍の速さで移動しなさい」というわけです。

*売上を20%上げて経費を20%圧縮すれば会社は黒字

 営業が2倍のスピードでお客様のところを回ってこられるなら、売上を20%積み上げることは難しくありません。掃除のおばちゃんが2倍のスピードで掃除をしたなら、経費を20%圧縮することは難しくありません。現実に、澤田社長はハウステンボスのスタッフに「売上を20%上げて、経費を20%圧縮すれば、この会社は黒字ですよ」と伝えたといいます。

 「今日から2倍の速さで歩いてくれ」は「掃除・整理整頓をする」と同じくらい明快なことだと思います。以前、引越し業者とももいろクローバーZの話を書きましたが、「髪の毛が地面につくまで深くおじぎをする、おじぎをしたら5秒間数える」も同じように明快です。そして、いずれも「こんな市場で、こんな競合がいるから、こんなことをやりましょう」というような、いわゆる「戦略」の話ではありません。しかし、成果の根源はこんなところにあるんですね。

 むしろ、本当の「戦略」とは「何を徹底するか」なのかもしれませんね。まさに「理念」が人を作り、会社を作り、事業を作るわけです。