著者:石田 麻琴

Eコマース事業に全員が本気になるための第一歩「評価の再設定」【no.0803】

 メーカーや卸、実店舗などの「母体となる事業」をおこなっている会社がEコマース事業をスタートするとき、注意をしなければいけないのが「評価」の設定です。

 ネットショップ専業の会社であれば、会社の業績=Eコマース事業の売上になります。会社で働くスタッフの評価も「ネットショップの売上」から判断されるのでシンプルです。しかし、例えばこれまで実店舗で商品を販売してきた、例えばメーカーとして製造メーカーとしてBtoBをおこなってきたという場合、Eコマース事業を円滑にスタートするためには「評価」の再設定が必要になります。

 企業のミッションとしては自社の商品やサービスをよりたくさんの方により長く利用してもらうことです。経営者の役割としては売上や利益を最大化させること。ですから本来、自社の商品が実店舗で売れたとしてもネットショップで売れたとしても「売上が最大化させるならどちらでも良い」はずなのですが、スタッフとしては一概にそうとはなりません。

 自分自身の評価、キャリア、そして給与の問題が絡んでくるからです。会社をもっと良くしたい成長させたいと思うと同時に、自分をもっと豊かにしたい評価されたいという気持ちもあるでしょう。人によっては後者の気持ちが強い人も多いでしょうし、むしろ「自分のために仕事をやる」方が自然といえば自然です。

 ビジネスモデルを変化させていく中、これまでと同じ基準で評価を設定していてはスタッフの仕事に不具合が起こります。Eコマースという新しい軸に協力したくても協力できない状態になってしまいます。これでは競合他社に勝てるわけがありません。

 お客様はインターネットで検索をする時代です。また、ネットショップでみた商品を実店舗に確認しにいく時代です。実店舗で確認した商品をネットショップで買う時代でもあります。お客様にとっては実店舗で買ってもネットで買っても一緒、ただ個々のライフスタイルによって購入チャネルが変わるだけです。

 その中で、実店舗は実店舗の売上で評価をし、ネットショップはネットショップの売上での評価とするならば「リアルとネットは別。お客様にリアルとネットの行き来を促せない」ということになります。デジタル時代のマーケティングとは逆方向に行ってしまいます。リアルとネットを統合した「販売部」での売上で評価をおこなうように再設定するべきでしょう。

 これまでメーカーとして商品のBtoBの製造卸をメインにしてきたが、Eコマースを活用したBtoCの直販を軸にしたいという会社も同様です。既存の会社の評価はBtoBの卸の成果によるのですから、評価がそのままではEコマースの動きが「内心面白くない」というスタッフも出てきます。新しい事業の柱をつくるために全社的に協力をしなくてはいけないわけですから、経営者としては「スタッフが進んで協力したくなるような評価」の再設定をおこないたいところです。

 たとえ内部や外部から専任の担当者を用意したとしても、新しい事業の柱を軌道にのせるためには全社的な協力が必要になります。新しい事業を立ち上げると付随して新しい業務が発生したり、一時的に「売上を食い合う」バッティングが起ったりします。特にEコマースの場合、社内的な「お客様」が被る可能性が十分にあるので注意が必要です。

 ただ、やはり会社が合わせるべきなのは市場の変化、お客様のライフスタイルの変化です。リアルとネットは別物ではなく、これからは「リアル×ネット」の時代なわけですから、それに合わせた新しい評価をつくっていってください。母体の事業を持っている会社が「本気で」Eコマースに取り組むための「第一歩」なのではないでしょうか。

 おわり。

 

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