著者:石田 麻琴

「商品主導」から「顧客主導」のマーケティングへ。【no.0074】

(前回のブログを読んでからこちらをご覧ください)
「セブンアンドアイのオムニチャネル化構想は、本質的なビジネスモデル変化のメッセージである」とは‥!?

■「商品主導」のマーケティングから「顧客主導」のマーケティングへの変化‥!?

セブンアンドアイグループのオムニチャネル構想は、コンビニエンスストアでもデパートでもカタログでもパソコンからでもスマホからでもタブレットからでもどこからでも買えるんだよ、っていう単なるチャネルの拡大ではないっていう話を前回書きました。商品データや在庫データの統合と、ネットショップに300万点の商品を置くのは簡単なことではないけども、セブンアンドアイグループの資本力があればできないことでは全くないでしょうねってことも。

セブンアンドアイグループでは、これまでの成長を第一段階、これからの成長を第二段階と位置づけていて、これはオムニチャネル化すること、つまりシステムを整えることが本当の目的ではないな、と。オムニチャネル化はあくまで手段であって、目的は別のところにある。それは何かといえば、これからのセブンアンドアイグループは「顧客主導」のマーケティングに変えていく、と。これまでの「商品主導」のマーケティングから「顧客主導」のマーケティングに変えていくんだよ、ってのが本質的なメッセージだと思うわけです。

■ネットでは簡単に知れることが、リアルビジネスではわからない‥!?

ある程度、インターネットビジネスをやっている方なら当然のごとく知っていること、それがリアルビジネスの世界では知ることができません。例えばアクセス人数、リアルの世界にグーグルアナリティクスなんてないから、今日コンビニエンスストアに何人のお客様がいらしたか、なんて取得しきれていません。滞在時間、ネットショップの滞在時間は毎日データで確認できますが、コンビニエンスストアに来店したお客様が平均して何分店内にいたかなんて出せないでしょう。そして、最も重要と思われる、来店したけど買わなかった人の数や割合、これも簡単にデータで取得することはできません。

インターネットでビジネスをやってきた人間にとって、これは逆にスゴイと思います。取得できるデータの中心は、購入者の数と購入した商品のデータ。実店舗だと、その立地や環境のデータも活用すると思いますが、日々の運営に使っているデータはいわゆる「購入数」のデータと「購入商品」のデータだけなのです。だから、あくまでマーケティングは商品が主導、商品の売れ筋と売れ方を分析しながら、時代の変化に対して最適なマーチャンダイジングをしてきた、ということでしょう。

■顧客データの統合、そしてその先にある戦略とは‥!?

これをオムニチャネル化することで、何が起こるか。その本質は顧客データの取得にあります。リアルのチャネルに加えて、インターネット上のチャネルを活用することで、必然的にお客様ごとに顧客IDを持っていただくことになります。いずれ、スマホを使ってリアルのチャネルに自動ログインするような仕組みも検討しているでしょう。オムニチャネル化によって、どんなお客様がいつどこでどんな買い物をしているのかが、全てデータで見えるようになるわけです。

こうなると、既に商品主導でマーケティングをしていく必要はなくなります。商品主導のマーケティングは当たるも八卦当たらぬも八卦で在庫リスクが高いのです。それよりも、顧客データを分析して、特定の顧客層にマッチングする商品を企画する、その商品を特定の顧客層だけに提案する、そして購入いただく、というデータマーケティング戦略を打つ方がはるかに安全です。どんな商品を企画すれば良いのか、どのくらいの在庫を持てばいいのかがより明確になってきます。全て顧客データからの逆算でマーケティングを仕掛けていくわけです。これがセブンアンドアイグループのオムニチャネル化構想の本質。顧客主導のマーケティングへのシフトです。

次の戦略は、顧客データを活用したマーケティングのアルゴリズムを考えることと、商品の製造になりますね。いまはPB商品として1種類の商品も、微妙に味を変えて100種類を展開、最適な顧客に最適な商品を提案することができるようになるでしょうね。在庫が残らないことがわかれば、100種類別々の味で作ることは可能でしょうから。