ショッピングモールと自社サイトの「検索」からの集客。引き続き自社サイトの考え方について紹介をしていきます。
*ショッピングモール依存をやめた、とあるネットショップの話
自社サイトの「検索」からの集客を考えるまでに、自社サイトで売上をつくるための「条件」が揃っているかを考えた方がいいこと、を前回お伝えしました。極端な話ですが、ショッピングモールへの出店をやめてしまうのも方法のひとつです。
極論です。ショッピングモールの出店をやめるとまず売上が下がります。自社サイトにお客様が移動してくれる保証はありません。ただお客様がショッピングモールから自社サイトに移動してくれればEコマース事業としての利益率が安定します。自社ならではの販促・サービスを提案することができます。そしてブランドを確立することができます。
簡単ではありません。しかし、これを実現することができた会社がないわけでもありません。ショッピングモール依存をやめたネットショップの話として紹介していきます。
*とある鞄のメーカーの息子が、楽天市場を始めた
名前は伏せます。いまでは一般的にもかなり有名になった鞄のブランドです。このブランドは元々鞄のメーカーでした。現社長の父親が町のひとつの鞄屋さんとして、メーカーを営んでいました。当時の年商は600万円ほどだったと聞いたことがあります。あるとき、現社長である息子が家業を継ぐためにサラリーマンから戻ってきました。職人だった父にない部分、息子は鞄の営業を始めました。
息子が目をつけたのは楽天市場でした。当時は2003年頃、楽天市場が立ち上げの時期から一気の成長をしようとしていたその少し前のことでした。ここから楽天市場は飛躍的に成長をしていきます。ネットショッピングの流行りの波がやってきて、「需要と供給」の「需要」が加速的に高まっていきました。
メールアドレスを増やしてメルマガを流し売上を上げる、広告を購入して売上を上げる。この戦略でネットショップが拡大をしていった時代です。私がEコマースの業界に足を踏み入れた2005年はまさにこの時代です。200万円の広告で1,000万円の売上を作る。あり得なくない市場でした。
*楽天市場全盛の時代に、息子がおこなったこととは
私の前職の会社もこの波の真ん中にいました。商品の確保と広告選択、毎日のように楽天市場から広告の提案があり、毎週広告の入稿がありました。ネットショップの、特に上位店については広告を中心にマーケティング戦略が回っていました。
そんな「入れ食い状態」の中、この鞄メーカーの息子がおこなったのは当時の楽天市場のネットショップ運営者たちには理解しがたいことでした。広告費にお金を投入せず、実店舗をつくったのです。いまでは全国に数十店舗という実店舗をオープンさせていますが、その最初のひとつは楽天市場全盛の時代につくられたものだったのでした。
それと同時に息子がおこなったことがあります。ショッピングモール依存からの離脱でした。2006年頃から自社サイトに着手し、社内にもWEBデザイナーや、広告代理店出身の(当時の)SEO対策の担当者を増やしていきました。
Eコマースの「需要と供給」のバランスが変わり始めるのが2009年からです。その変化に気が付いた事業者が2010年頃から少しずつ本気で自社サイトに取り組み始めたことを考えると、かなり早い着手でした。
さてあれから15年経って、この会社がどうなっているか。いまでは50億円企業です。ショッピングモール発のネットショップ、オリジナル商材のネットショップでここまで成長した会社は稀有です。