著者:石田 麻琴

タクシー運転手はお客さんの何をチェックしているのか【no.1297】

(2017年のECMJコラムのリライトです)

 実はいま午前2時です。東京のとある街のスーパー銭湯にいます。まあ、新宿です。新宿にあるテルマー湯というスパみたいなところです。帰ることができなかったのです。友達2人と飲んでいたのですが、彼らを「先にどうぞどうぞ」とタクシーを見送ってから、なんとタクシーが捕まらなかったのです。

 今日の新宿はなぜだか売り手市場。「空車」の赤ランプを灯しているタクシーも、なぜか私の横を通り過ぎていきます。いつもは「空車」ばかりが並んでいるのに・・。そこで、始発までまだ時間もあることですし、タクシーがお客様を「選ばない」ポイントを考えてみました。

*男女のカップルは選ばない

 激しい売り手市場なら、男女のカップルは選びません。なぜなら、男女のカップルは同じ場所でふたりとも降りる可能性が高いからです。どうせふたりを乗せるなら、経由してバラバラの場所で降りてもらった方がいい。私がタクシーの運転手だったらそう考えるでしょう。この時間だとかなりお酒も入っているでしょうし、後部座席でイチャイチャされるのも苦痛です。

*必死感がなければ選ばない

 タクシーを止めるのに必死な人間は態度や動きにその気持ちが出ます。車線ギリギリに身体を乗り出したり、オーバーアクションで運転手さんにアピールをしようとするはずです。なぜなら、早くタクシーを捕まえないと困るから。この気持ちが出ているお客さんこそ、遠距離を利用するお客さんです。思い返してみると、私は少々必死感が足りなかったかもしれません。そんなに近いわけでもないんですけどね。

*身なりがよい人は選ばない

 タクシーに乗る基点を新宿と考えれば、恵比寿や六本木、麻布十番など、おしゃれな地域に住んでいる人を乗せてしまうと短距離の売上で終わってしまいます。いかにも都会に住んでいそうな身なりがよい人はできるだけ選びたくないものです。ここも別に私の身なりが良かったわけではないと思います。ユニクロのセーターの上に、ボタンの取れたピーコートを着ていました。

*まだまだ遊びにいく人は選ばない

 こちらも同様で、終電を過ぎて新宿から遊びに行く場所、と考えれば、渋谷か六本木、もしくは恵比寿か西麻布のバーが有力でしょう。裏をかいて池袋や上野あたりもありますが、この時間のタクシー運転手さんの要求レベルからすればいずれも低レベルです。確実に5,000円以上、願わくば10,000円以上を狙いたいところです。仲間とワイワイガヤガヤ、タクシーを探しているグループは当然スルーになります。

*酔っぱらいのオジサンは選ばない

 最後にしてやっとまともな選択理由がでました。酔っぱらった面倒くさそうなオジサンをわざわざ選ぶ理由はありません。タクシーの運転手さんくらいになると時速60キロでの脇道に立つお客様の取捨選択レベルも相当なもののはずです。上記の「選ばれない理由」を見返したときに、私にタクシーが止まってくれなかった理由は、これ以外ないような気がするのですが・・。

 ―――ということで、タクシーの運転手さんがお客様を「選ばない」ポイントについて整理をしてみました。おそらく私の場合ですが、「タクシーを捕まえる必死感に欠けていたこと」「酔っぱらいのオジサンに思われていたこと」がスルーされ続けた理由だと推測されます。

 終電後の新宿でタクシーをつかまえる際には、しっかりした足どりを保ち、なおかつ車線ギリギリ、もしくは車線に半身の必死さでアピールすることをおすすめします。そして自信をもって「新大久保まで(隣の駅)」といいましょう。