著者:石田 麻琴

Eコマースの実践を「事業承継」の準備につなげる【no.1264】

(2017年のECMJコラムのリライトです)

 少し前のことになるのですが、とある団体の合宿に参加してきました。3泊4日というそこそこ長い日数合宿所にカンヅメになり勉強をしてきました。こんなにまとまった時間勉強するのは、小学校のときの早稲田アカデミーの夏合宿以来だったかもしれません。

 勉強会のカリキュラムの中には選択制のものがあり、私は「事業承継」についての講座を受けることにしました。

 まだ私の子どもは2歳なので、事業承継は遠い先になるでしょうし、そもそも承継できるような事業内容でもないので自分のことではありません。ECMJの顧問先やネットの相談をいただく方には、事業承継を考えられている会社さんもあります。どのようなことで悩むか、また自分からサポートできることはあるかを知りたかったのです。

*市場がシュリンクしていく中での事業継承の難しさ

 これからの時代の事業承継は簡単ではありません。ポイントは「市場が下がっていく」中での承継になるからです。これまで(といってもすでに20年以上前ですが)は大量生産大量消費の時代、日本が裕福になっていわゆる「中流」が増えた時代、日本の人口も増えていった時代ですから、「伸びていく」会社が多かった時代だといえます。

 これからの時代は逆です。平均所得が下がっています。貧富の差が二極化していきます。日本の人口が減っていきます。ITやインターネットの進化、ロボットやAIの登場により既存の仕事が急速に置き換わっていきます。そんな時代の中で、「自分の会社の事業を子どもたちに継がせるのが良いのか」という悩みです。業界によっては悩みのない会社もあるでしょうが、製造業などほとんどの会社が頭を抱える問題なのではないでしょうか。

 もうひとつ、事業承継をすると会社が変わります。創業者社長から二代目に事業承継をしたとして、スタッフが今までどおり付いてきてくれるかはわかりません。ECMJ元取締役で元ダイヤモンド社社長の故岩佐豊氏の話を思い出しました。「創業者社長はわがままを言っても『社長だから仕方ないか』でスタッフが付いてきてくれる。でも、二代目はそうはいかない。これは創業者社長だけの特権のようなものだ」と。

 そして最後。これは私以外の講座に参加した「事業承継を考えられている」会社の社長さんがみなさんおっしゃっていたことです。「できれば次の世代の商売のタネを作ってから、承継したい」。つまり、事業承継をして「これからの時代にどうやって売上を確保するかは自分たちで考えてね」というふうにはしたくない、ということでした。

*事業承継は「時代にあったカタチ」に修正するチャンス

 日々様々なチャレンジをおこなっていても、経営者の根本的な戦略や方針は変わりません。事業承継というのは、会社の戦略は方針を見直して「次の時代にあったカタチ」に修正する重要なチャンスなのです。ここは次世代への引き継ぎ、新しいアプローチとして「インターネットの活用」というのは大いにあり得るのではないかと思いました。

 実際にECMJの顧問先の例からも考えると、事業承継をされる側の「息子」さんがインターネットの活用に積極的です。参入障壁は低いですが、初期コストも低いのでマーケティングのシミュレーションになります。また、インターネットを活用することで現状のメインとなる事業の販路の邪魔をしない「プラスオン」の売上をつくることも可能です。Eコマースであれば商品企画から物流・カスタマーサポートまで、一貫した事業の流れを経験から学ぶこともできます。

 事業承継をするためには3~5年の準備が必要だといいます。アプローチとして「インターネットの活用」を任せてみるのも良いのではないでしょうか。