ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「『笹かまぼこ』
というような直接的な単体キーワードはリスティング広告の入札金額が一番高いんですよ」
麻間(あさま)さんが少し呆れたようにいいました。七海さんと友花里さんは恥ずかしそうに下を向きました。七海さんが顔を上げて突然笑顔になり、言いました。
「まあ、早い段階でそういう大切なことに気づけたってことで、良かったじゃん。『笹かまぼこ 特殊』ってキーワードが1クリック15円だってこともわかったわけだしさ。この調子でどんどん次のキーワード、考えていこうよ」
「あんた、どんだけポジティブなのよ。鬼切社長から許可してもらった広告費、けっこう使っちゃったんだからね」
今後は友花里さんが呆れたように七海さんを見ます。その様子をおかしそうに見ながら麻間さんがいいました。
「まあ、今回の広告費については勉強の範囲として私の方からも鬼切社長に話しておきますよ。広告の怖いところって、露骨にお金が減っていくことなんですよね。リスティング広告の広告費だって、そのままお金じゃないですか。お金で売上という「お金」を買っているような、ある種ギャンブルのような感覚を覚えます。あまりハマると、危ない・・」
麻間さんが何かを言おうとしてやめたのを友花里さんは見逃しませんでした。それに気づかなかった七海さんが、マーカーを持って、ホワイトボードにキーワードの候補を書き出します。
「ひとつはいま話題に出た『笹かまぼこ 特殊』ってやつ。あとは『笹かまぼこ わさび』とか『笹かまぼこ 仙台』とか『笹かまぼこ 漬け』とか、『笹かまぼこ』と何かの言葉を合わせてキーワードを作っていけばいいよね。あとは『笹かまぼこ おにぎり水産』とか『笹かまぼこ 笹かまオニギリ』とかかなぁ」
七海さんがブツブツひとりごとをいいながらホワイトボードにマーカーを走らせます。それを見ていた友花里さんが何かに気づいたように言いました。
「七海、私思ったんだけども、『笹かまぼこ おにぎり水産』って探す人って、リスティング広告をかけておく意味はあるのかなぁ。だって、『笹かまぼこ おにぎり水産』って検索する人って、おにぎり水産のことを知っているからインターネットで検索してるんだと思うの。だったら、ネットショップの『笹かまオニギリ』まで直接来てくれるハズじゃない。広告かけておく必要はないんじゃないかなぁって」
「な、る、ほ、ど~」
友花里さんの意見に七海さんは納得しているようでした。「じゃあ、『笹かまぼこ 笹かまオニギリ』、このキーワードもいらないよね。『笹かまぼこ 仙台』。これも何だかわかりきっているようなキーワードになっちゃってるけど、いらないかな」
「『笹かまぼこ 仙台』はあってもいいんじゃない?『笹かまぼこ 仙台』っていうキーワードで検索するお客様は『笹かまぼこを買いたいけれども何を買うかは決めていない。仙台で売っている笹かまぼこが欲しい』ってことだと思うから。『笹かまぼこ 笹かまオニギリ』はたしかにいらないかもね」
ここまで七海さんと友花里さんのやりとりを黙って聞いていた麻間さんが突然口を開きました。
「友花里さんの読みは正しい。ただ、『笹かまぼこ おにぎり水産』と『笹かまぼこ 笹かまオニギリ』を最初から削ってしまうのは、ちょっと待った方がいいかもしれません。一度リスティング広告のキーワードに設定して、成果をみてから判断をするのが良いと思いますよ。それより気になるのは・・」
つづきはこちら。