著者:石田 麻琴

ネットショップの売上が上がるは、確かにたまたま、なんだけども・・【no.1165】

 ネットショップの売上が上がるのって、たまたまじゃないんですか―――。

 私も、昔はそう思っていた。前職の会社に入社したとき、すでにEコマース事業での年商が数億円あった。若い社長(28歳だった)をみて、なんでこんなに売上を上げているんだろうと思った。きっと、たまたまネットショップで当たったんだろうと思った。もしかしたら自分にも、どこかでそのたまたまが来るかもしれない。

 社長が言った言葉が印象的だった。「もう金持ちになる方法はわかった」。この表現がいいか悪いか、そこも議論がありそうではあるけれど、「金持ちになる方法なんてあるのかな?」と素直に思った。

 確かに、ネットショップで売上が上がるのはたまたまの部分が多い。意図していない商品が突然売れたり、意図していない販促企画からの注文が多かったり、こちらが意図していない買い方をお客様がしてくれたりする。それで売上が上がる。これは本当にたまたま。

 でもポイントは、「たまたまをたくさん生み出すためのチャレンジの数」と「たまたまが生まれたときに見逃さない気づき力」だと思う。たまたまは日々、どこかで生まれている。たまたまの回数を多くして、それを見逃さずに追っていけば、売上が上がる。そして、売上が売上を呼ぶのがインターネットの世界。

 たまたまをたくさん生み出すためにはどうすればいいか。これは数だ。情報の量、商品の数、メールマガジンも回数が多い方が実はいい。営業も人に会う数が基本だと思うし、アポイントの数が多ければ、それだけ売上につながる可能性も高い。

 もうひとつ、たまたまを見逃さず、たまたまに気づくためにはどうすればいいか。これが意外と抜けていたり、甘かったりする。データをみること、原因と結果の相関性を考え続けること、昨日と今日の変化、先週と今週の変化、先月と今月の変化、を読み続けること。そうすれば、より効率的に数を回すことができるようになる。因果関係がみえてくれば、モチベーションにもつながる。

 ネットショップの売上が上がるタイミングには、明らかな変化がある。「これ、ちょっといつもと違うぞ」という変化が起こる。代表的なものをふたつ挙げてみたいと思う。

 ひとつ、スピードが違う。スピードとはお客様の反応の速度のことだ。新しい商品を発売したとき、新しい販促企画をリリースしたとき、新しい広告を出稿したときなどに起こる。いつもよりも、お客様のリアクションが早いのだ。商品を出した瞬間に、「どのタイミングで見たの?」と疑問に思うくらい素早く注文が落ちてくる。これを見逃してはいけない。

 ひとつ、転換率が落ちない。基本的にネットショップは、アクセス数が増えれば増えるほど転換率が下がる。なぜなら、アクセス数が増えると新規顧客の割合が増えていくからだ。新規顧客は一見さんのため、購入に至らずにネットショップを離脱してしまうことが多い。ただ、新規顧客の閲覧数が増えているにも関わらず転換率がほとんど落ちない商品ページがあったとしたら、それはネットショップの売上が上がるチャンスである。

 このふたつはネットショップを改善し続ける限り、どこかのタイミングで必ず起こる。大切なのは、このふたつが起こったタイミング、起こった商品、起こった販促企画、起こった広告を見逃さないことなのだ。そして、徹底的に攻める。徹底的に鉱脈を掘り下げていく。ネットショップの運営において、「徹底的に鉱脈を掘り下げる」とはすなわち、「たくさんのお客様に知ってもらう」ということになる。

 おわり。