著者:石田 麻琴

「年数」の長さ、「利益率」の高さ。ともに「続ける」ことのがキーワード。【no.1050】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「『年数』、『利益率』ともに『続ける』というキーワードがポイントなんですね」

 友花里さんの言葉に、鬼切社長は満足そうな笑顔を見せました。

「その通りです。商売はやはり『続ける』ということが大切です。『続ける』からこそ試行錯誤があり、『続ける』からこそ新しい発想が生まれます。すべては毎日の仕事をおこない『続ける』中から見えてくるものです。外側からいくら頑張って考えていても、アイデアは思いつきません」

 七海さんと友花里さんは鬼切社長の言葉に頷きました。

「『年数』が長い会社は、基本的に『利益率』も高いです。ひとつは、長くお客様の信頼にこたえてきたため、名前を知ってもらえていること。そのため、広告宣伝費があまり必要ないんですね。お客様が知っているので、集まってきてもらうことができます。また、長く事業を継続し続けているだけに、サービスの仕組みがシステム化されているという部分もあります。ですから、固定費も抑えられていることが多いです。結果、『年数』が長い会社は、高い『利益率』をほこっています。逆に言うと、高い『利益率』が実現できるように努力しない会社は、長い『年数』の事業継続ができないのかもしれませんね」

 七海さんと友花里さんがメモを取り終わるのを待って、鬼切社長は言いました。

「最後にあとひとつ。これはすべてがすべて、とは必ずしも言えませんが。『年数』が長く、『利益率』が高い会社は、『ひとつのことを継続している』会社が多いといえます。事業をあまり多角化しない。軸を変えない。不動産業ならずっと不動産業。飲食業だったらずっと飲食業。水産加工業だったらずっと水産加工業。同じ商品を徹底的に作り続けて、市場の中で絶対的な競争力を作る。だからこそ、何十年、何百年と市場の中で生き残ることができている。ちょうど、私たち『おにぎり水産』も笹かまぼこ一筋、だからこそ長く続いている会社になれているのだと思います」

 鬼切社長は自信をもっていいました。それは、おにぎり水産をこれまで経営してきた鬼切社長のお父さんお爺さん、代々への尊敬の念でもありました。七海さんと友花里さんは、おにぎり水産のことがさらに好きになりました。

「鬼切社長、ありがとうございました」

 七海さんと友花里さんは、鬼切社長から説明を受けた内容を麻間(あさま)さんにメールしました。麻間さんからのメールの返信は、七海さんと友花里さんが退社をする直前にやってきました。

「七海さん、友花里さん、鬼切社長から良い話が聞けてよかったですね。鬼切社長は七海さんと友花里さんのことを非常に期待しています。だからこそ、長い時間をかけて事業についての話をしたり、直販事業をおふたりに任せたりしているわけです。もっとおにぎり水産の直販を盛り上げられるように。もっと七海さんと友花里さん自身のキャリアが良いものになるように、明日からもネットショップ、頑張っていきましょうね」

 七海さんと友花里さんはそのまま家に帰るつもりでしたが、今日はふたりで食事をすることにしました。おにぎり水産ネットショップ「笹かまおにぎり」のさらなる成功を祈って―――。

 翌朝、七海さんと友花里さんは出勤すると、いつものように「実行数値管理表」の入力を始めました。ふたりがネットショップのシステムを開くと、ある異常値に気が付きました。実は少しだけ予感はありました。昨日、退社する直前、メールボックスの「受注メール」がいつもよりもたくさん未読になっていたから・・。

 つづきはこちら