著者:石田 麻琴

「利益率が高い」ことは、他のお店に比べて「違い」があることの裏返し【no.1008】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「そして、もうひとつ、私が大切だと思っているのが『利益率』です。麻間(あさま)さんの宿題のポイントもまさにここでしょう」

「『年数』と違って、『利益率』は自分たちでコントロールできることですよね?」

 七海さんは鬼切社長に意見を投げました。

「そうですね。『年数』のように自分たちがいくら頑張ってもどうにもならないこととは違います。ただ、『利益率』を上げるのも簡単ではないですよ。友花里さん、『利益率が高い』ってつまりどういうことですかね」

 友花里さんは10秒ほどだまって考えてからいいました。

「安く仕入れたり、安く作ったりしているモノに多くの利益をのせている状態ってことですよね。たとえば100円でつくったモノを500円で売る。400円の利益をのせていて、利益率は80%ってことになるんだと思います。これって実は、自分たちで設定することが可能ですよね」

「そうなんです。『高い利益率』というのは、実は自分たちで設定することが可能なんですね。たとえば、おにぎり水産の笹かまぼこセット2,000円。この商品の販売価格を2,000円から3,000円に変えればより多くの利益がおにぎり水産に残ることになります。これは自分たちで決めることができますが、問題がありますよね。七海さん、わかりますか?」

 鬼切社長は突然七海さんに質問をしました。鬼切社長と友花里さんのやり取りをボーっと聞いていた七海さんは不意をつかれたようで、「えっ、えっ、なんでしたっけ」と困った声を出しました。友花里さんが横から話の流れを説明します。すると、七海さんはあまり考えず、すぐに回答を出しました。

「それって、きっとですけど、お客様が購入してくれるかは別の問題、ってことなんだと思います」

 七海さんは自信をもっていいました。鬼切社長は笑顔になっていいました。

「素晴らしい!あまりちゃんと話を聞いていなかったようなのに、さすがですね。その通りです。自分たちで販売価格も利益率も設定することはできますが、お客様に購入いただかないと意味がないんですね。そこらへんに落ちている石を1万円で売ることはできますが、きっと誰も買ってくれないでしょうから」

 七海さんは自分の答えに満足したようでした。鬼切社長は七海さんの方をみて、さらに質問を重ねました。

「では、ここでさらに質問です。『高い利益率』で売れる商品とは、どんな商品のことでしょうか?」

 七海さんは視線を鬼切社長から友花里さんに移して、「友花里、わかる?」と聞きました。友花里さんは「なんとなく、イメージはつくけども・・」と答えました。「じゃあ、友花里こたえてよ」。そう七海さんから促されて、鬼切社長に友花里さんが回答をしました。

「やっぱり、お客様が高いお金を出しても買いたい商品ってことなんだと思います。高いお金を出しても買いたい商品っていうのは、つまり・・他では売っていない商品ってことなんじゃないかなと思います。ここは今までのミーティングで麻間さんに『付加価値をつけることが大事』と何度もいわれてきたので、麻間さんの受け売りっていうところもあるのですが・・」

 鬼切社長はニッコリと笑って、友花里さんに「素晴らしい!」といいました。

「さすが友花里さん、素晴らしい回答です。つまり、『利益率が高い』ということは、それだけ他のお店に比べて『違い』がある、ということなんですね。『利益率』の価値の本質はそこにあるんです」

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