著者:石田 麻琴

結果に疑問を抱く。結果の原因を探す。そして原因を作り出す。中編【no.0928】

 中編です。前回は、こちらから。

 「○○(アーティスト名)のグッズなんですけど、次はいつ入荷予定ですか?」。お客様からこんなメールをいただいたのです。「○○」は、韓流のアイドルグループの名前。はて、○○のグッズなんて、うちのネットショップで扱っていたかな。一瞬、頭に?マークが浮かびましたが、「次はいつ入荷ですか?」の問い合わせから、なんとなく状況が飲みこめてきました。

 このぬいぐるみ、○○のファンの方が買っていたのでした。ぬいぐるみのデザインが○○のメンバーに近かったので、○○のグッズとして(実際は、公認グッズでも何でもない)。ある日突然、○○のファンの方の間で話題となり、700個の注文がきたのでした。そして、その後も毎日、お客様からの問い合わせが絶えません。

 インターネットやSNSでこのぬいぐるみについて調べてみると、出るわ出るわ。○○のファンの方が様々なところで情報発信をしているようです。このぬいぐるみがなぜ売れるのか、疑問でしたが、自分たちが知らないところでここまで話題になっていたのかと、驚きました。

 ただ、問屋さんには在庫がありません。メーカーでも廃番の商品です。それもそのはず、このぬいぐるみはお荷物商品だったわけですから、追加生産をする気もありません。「○○のファンの方が求めている」という話をしても、メーカーにとってはリスクの高い生産です。

 それでも毎日、お客様から電話とメールで問い合わせがきます。ひとりひとりに状況を説明しても、拡散されるわけではありません。この状態が1ヵ月間ずっと続きました。

 もし、自社で単独生産をすれば、商品をつくることは可能なのか、ネットショップの担当者が工場に問い合わせをしました。自分たちでリスクをすべて被るので、なんとかお客様の期待に応えられないか、というわけです。ネットショップには毎日問い合わせがきていますし、インターネット上でも話題になっていますから、相当なニーズがあることはわかっています。

 3,500個、注文を受けたら生産しましょう。これが工場からの応えでした。3,500個に満たない場合は、お客様にお断りの連絡を入れるか、もしくは在庫を持ってもらうか、どちらかにしてください。そんな話です。

 このぬいぐるみに○○のファンの方からの相当なニーズがあることはわかっていますが、3,500個となるとはたして売り切ることができるのか、未知の領域ですから自信もなにもありません。どちらかというなら、「自信は無い」というのが本音です。

 もし、3,499個で予約注文が終わってしまった場合ならば、残りの1個を在庫として購入すればいいのですが、仮にこれが2,500個の予約注文で終了してしまった場合、残りの1,000個を買い取るのか。そんなリスクが頭をよぎります。たとえ2,500個を販売できたとしても、1,000個の在庫を持ってしまったら、利益はゼロです。いや、マイナスです。

 かといって、予約注文をいただいた2,500人のお客様全員に、「注文ロットに満たなかったため、今回は生産を見送ることになりました」とご連絡するのも申し訳ない。2,500人分の注文データと連絡先を管理するのも、簡単なことではありません。何から何まで、初めての事態。そして初めての事態にしては、ボリュームが大きい。

 ただ、「もしかしたら・・」という気持ちはありました。問い合わせをくれるお客様、インターネットで発信をしているお客様の他にも、声を発していないお客様はたくさんいるだろう、と。そして、「チャレンジしてみたい」、それが大きな気持ちです。

 期限は半月。3,500個を目指しての販売がスタートしました。

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2 コメント

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